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我らが少女A

2017年8月1日から高村薫さんによる新連載「我らが少女A」が始まりました。合田雄一郎刑事シリーズ最新作です。東京郊外で起きた殺人事件。過去と現在が交錯し、土地と人間が溶け合う中で、現代が浮かび上がります。

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我らが少女A

/135 第4章 15=高村薫 多田和博・挿画監修

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 遠いチリ沖で起きた地震による津波が一日かけて太平洋を伝わってくるようにして、さざ波はついに小野雄太の足元にも届く。

 日勤で勤務に就いた十日朝、午前中の授業に出る外大生の姿もまばらになり始めた十時四十七分の是政行きがホームを出てゆき、二十人ほどの学生たちが改札からはけてゆく。その流れが途切れるのを待って、中断していたホームの清掃に戻ると、箒(ほうき)の先に突然スニーカーの足が現れて、小野は顔を上げる。ひとりホームに残っていたその小柄な乗客は、生湯葉のような薄い皮膚を引きつらせてにっこりし、お久しぶり、と言う。

 浅井? 浅井忍? 思わず声が嗄(しやが)れる。

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