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我らが少女A

2017年8月1日から高村薫さんによる新連載「我らが少女A」が始まりました。合田雄一郎刑事シリーズ最新作です。東京郊外で起きた殺人事件。過去と現在が交錯し、土地と人間が溶け合う中で、現代が浮かび上がります。

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我らが少女A

/137 第4章 17=高村薫 多田和博・挿画監修

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 刑事教養部の授業は、擬律判断を左右する初動捜査の捜査指揮の実務に進んでいる。

 第一次捜査権をもつ警察の初動捜査の目的は、犯罪があると思料するときにその犯人の特定のために証拠を収集・保全することに尽きる。一方検察は、同じ事案について、公訴提起の要否の判断や手続きの遂行に必要な証拠を収集・保全するのであり、両者の視点は大きく異なっている。しかし、先行するのはあくまで警察の初動捜査であり、そこで生きてくるのは捜査員個々の豊富な経験と知識以外にないことを、合田は強調する。

 こんなことがありました。あるマンションの下に頭から血を流した高齢の男性が倒れていて、自宅に遺書があったので当初は飛び降り自殺と見られました。ところが駆けつけた機捜の捜査員が、非常階段の踊り場に残されたズック痕を見て、事件性があると判断したのです。そのときのズック痕の写真です。このような歩様を<蟻足間(ぎそくかん)>と言います--。

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