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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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映画「007」シリーズの第2作、「ロシアより愛をこめて」は…

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 映画「007」シリーズの第2作、「ロシアより愛をこめて」は日本公開当初「007 危機一発」のタイトルだった。後に映画評論家になる水野晴郎(みずの・はるお)さんが、危機一髪と銃弾の一発をかけて作った邦題だという▲おかげで国語の試験で「危機一発」と書いてしまった方もおられよう。ちなみに危機一髪という熟語は危ういことを「千鈞(せんきん)を一髪で引くごとし」--1本の髪で途方もなく重い物を引くような事態にたとえた中国の古典から生まれた▲公開写真を見たら、まさに「危機一髪」、あるいは「間一髪」だった。先日のJR西日本の新幹線のぞみの台車の亀裂である。縦17センチの台車鋼材に下から14センチにわたって亀裂が入っており、残りわずか3センチで大重量を支えていたのだ▲そこが破断したなら高速での脱線の恐れがあったのがよく分かる。この台車で3時間、700キロ以上を乗客をのせて走行したのだから、重大事故と乗客の無事を分けたのは髪ならぬ紙一重の差だった▲JR西日本は12年前の福知山線脱線で安全文化の欠陥を指弾された。そんな過去も間一髪の事態への人々のまなざしを険しいものにしている。同社にとって事故を免れたのは偶然で、今後の安全策の改善を果たしてこそ幸運と呼べる▲こと鉄道についてはJRや大手私鉄の架線切れや停電、車両破損などのトラブルが相次いでいる。金属疲労の可能性がある今回の台車破損も含め、背景に設備老朽化を指摘する声もある。最後の一髪までもが細くなっていないか、心配だ。

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