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シリア

世界遺産パルミラ無残 IS破壊の跡

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ISに破壊され、舞台上に石材が散乱した円形劇場=2017年12月18日、シリア中部パルミラで篠田航一撮影

 【パルミラ(シリア中部)篠田航一】「パーン」。乾いた爆発音が何度も響く。同行のシリア軍兵士に聞くと「地雷の爆破処理だ」と答えた。18日訪れた中部の世界遺産・パルミラ遺跡。古代シルクロード交易で栄えた「砂漠の花嫁」は、今年3月まで断続的に支配した過激派組織「イスラム国」(IS)に踏みにじられ、がれきに覆われていた。

 「遺跡に近付きすぎるな。私の足跡を追って歩け」。同行兵士に注意され、慌てて遺跡から離れる。敷地内の地雷撤去は「ほぼ完了した」というが、がれき周辺には接近しないよう念押しされた。

アーチが崩れ落ちた凱旋門=2017年12月18日、シリア中部パルミラで篠田航一撮影

 2世紀ごろの建造とされる凱旋門のアーチは崩落。ISが爆破したという。古代ローマ時代の円形劇場も中心部が破壊され、舞台部分には石材が散乱していた。ISが市民らを「処刑」したのがこの劇場だ。近くにあるベル神殿の本殿も大半が崩落していた。

 唯一神であるイスラム教の教義を極端に解釈したISは、多神教の古代遺跡や石像をシリアやイラクで破壊し続けた。その一方、資金源として一部を密売にも回した。「東西交易で栄えたパルミラは、シリア人だけでなく人類全体の遺産。この廃虚を見ると言葉を失う」。地元出身のテレビ局記者アドナン・ハティブさん(54)は声を詰まらせる。

 パルミラはISが15年5月に制圧し、軍は16年3月に奪還したが、16年12月にISが再び制圧。軍は17年3月に再奪還した。

 取材中、ISが埋設した約7000発の地雷の爆破処理音が相次ぎ、上空には軍用ヘリも旋回していた。「周辺の偵察だ。ISの残党が砂漠地帯に残っている可能性がある」。ヘリを見上げ、兵士がそう説明した。

 パルミラ博物館にも軍の許可を得て入った。偶像崇拝に反対したISは彫像の顔の部分を削り取り、展示物は軒並み倒されている。軍によると、IS侵攻前に収蔵品の一部を別の場所に隠したハレド・アサド前館長は拷問されたが、保管先を決して口にしなかったため、2015年8月にISに殺害された。アサド前館長が命をかけて守った収蔵品は現在、首都ダマスカスに保管されているという。

 IS制圧前に約7万人いた住民は大半が避難したが、一部は帰還し、市内では重機を使ったがれきの撤去も始まった。

 雑貨店を営むアブー・ムハンマドさん(45)は今年、避難先の中部ホムスに妻と子供5人を残し、単身で戻ってきた。同じ通りに住んでいた友人が「政府の内通者」と疑われて処刑され、遺体が遺跡の柱に3日間つるされたという。住民がまだ少なく商売も難しい。「でも誰かが住み始めないと町は元に戻らない。どんなに傷ついてもここが私の故郷。必ず復興すると信じる」

 【ことば】パルミラ遺跡

シリア中部の砂漠地帯にある古代都市遺跡。シルクロードの東西交易で栄え、2~3世紀に最盛期を迎えた。ローマ帝国時代の遺跡などが数多く残され、ベル神殿や列柱、円形劇場で知られる。1980年に世界遺産に登録された。2011年以降のシリア内戦やIS侵攻で立ち入りが困難となり、13年に崩壊が危惧される「危機遺産」リストに登録された。

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