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(新潮社・2160円)
情け容赦ない死と輝く生の姿
読んで、いいようがないほどの強い衝撃を受けた。しばらく、読んだことを忘れようとさえした。黙り込むしかない。しかし、その沈黙のなかに、長篇のさまざまな断片が、語りかけてくる。二度目を読んで、もう一度向いあうしかなかった。
そのようにしても、この長篇小説が心のなかにすっかり落ち着いたというわけではない。したがって、以下に書くことは、小説の批評とか紹介というものではなく、思いのままの感想ということになりそうである。
そうなるのは、内容が衝撃的であるというばかりではなく、書かれ方が思いきって恣意(しい)的であることが手伝っているかもしれない。松家仁之氏のこれまでの作品は、構成が緻密であるのが特徴のひとつだった。それが突き崩されて、不規則的であることを恐れず、いま語りたい世界をすべて語ろうと意志しているかのようである。文体は松家氏らしく端整であるのは変らないのだが。
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