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鴻巣友季子・評 『源氏物語 上』/『源氏物語 A・ウェイリー版 第1巻』

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 ◆『源氏物語 上』紫式部著、角田光代訳(河出書房新社・3780円)

 ◆『源氏物語 A・ウェイリー版 第1巻』紫式部著、毬矢まりえ、森山恵訳(左右社・3456円)

画期的現代語訳と戻り訳で再創造

 今年は日本における『源氏物語』にとって、革新的な年となった。一つは、角田光代による画期的な現代語訳の刊行が始まったこと。もう一つは、「源氏」の国際的研究においては、今なお最重要であるアーサー・ウェイリーの英訳、これを日本語に訳し戻す試みが登場したこと。後者は、佐復秀樹に次いで二回目の「戻り訳」である。

 角田訳を評して、池澤夏樹は「モダニズムに仕立て直すとは、こういうことである」と書いているが、『源氏物語』は平安時代にしてすでに、語り手のポジション、語りの複雑さと多重性、内面描写などにおいて、現代小説の資質を備えていた。そのモダン性を角田訳は鮮やかに引き出しているのだ。「帚木(ははきぎ)」で光君と友人らが女性の品定めをする会話など、今このときにも世界中でなされている気がするし(ほのかにBL風味)…

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