SUNDAY LIBRARY

武田 砂鉄・評『社歌の研究』寺岡寛・著

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

働き方の価値観の断層が見えてくる

◆『社歌の研究』寺岡寛・著(同文舘出版/税別3500円)

  映画「釣りバカ日誌」の舞台である鈴木建設では、朝礼で起立して社歌を歌う慣習があり、遅刻魔の主人公・浜崎伝助が、社歌をハモりながら出社してくる、なんて光景があった。

 起立して社歌を歌う、というのは、会社への忠誠心を個々人が持っている前提の行為。今、非正規社員が多くなり、そのなかでも派遣社員、臨時アルバイトと、契約状態がバラバラのオフィスで、社歌を歌い上げるのなんてすっかり馴染(なじ)まない。

 社歌を探究した本書が浮き彫りにするのは「日本企業の同質性」。戦時中には「国粋的な歌詞と行進曲風」の社歌が作られ、高度成長期には「景気に比例し、明るいイメージ」の社歌が量産され、酒席で仲間と肩を組みながら歌われるほどに愛された。「家族的な和」を求める企業が、結束の手段として用いたのだ。

この記事は有料記事です。

残り525文字(全文910文字)

あわせて読みたい

注目の特集