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キャンパスNOW

看護教育 世界へ先導--聖路加国際大学

 再開発で注目を集める東京・築地。19世紀末は外国人居留地だったこの地で、日本ならではの看護教育を世界に発信しているのが、聖路加国際大学だ。日本で唯一の4年制看護学校として認可されて、今年で90年。4年制大学の看護学部としても私学の先陣を切り、2020年には聖公会のキリスト教伝道医師、ルドルフ・B・トイスラーが看護婦学校を設立して100年を迎える。歴史と実績に裏打ちされた教育の現場を訪ねた。

    病院と連携 成果うむ臨床実習

    聖路加国際病院での臨床実習を終え、CNEの島田さん(右)の助言に耳を傾ける3年生

     「昨日はシャワーを使ってもらえませんでしたが、今日はタイミングよく声をかけることができました」「私はリハビリを頑張ってもらえました」

     キャンパスに隣接する聖路加国際病院。臨床実習中の3年生4人が、担当患者との1日を看護師の島田伊津子さんに報告した。島田さんから助言と励ましを受けると、学生の輪に笑顔が広がった。

     看護学校に先駆け、トイスラーが1901年に創設したのが聖路加国際病院だ。看護学部での学びで最も重要な臨床実習を、学生は敷地内にある病院で、存分に体験できる。2014年度に両者が同一法人となってからは連携がさらに強化され、通常より11単位多い34単位という潤沢な実習が可能となった。

     院内での教育態勢も、一体化で厚みを増した。病棟や外来の学部実習担当者に加え、「CNE(クリニカル・ナース・エデュケーター)」と呼ばれる看護教育の専門家を昨年度から配置している。CNEの育成は、大学院修士課程看護教育学上級実践コースで14年度からスタートし、島田さんはその1期生だ。

     学部OGでもある島田さんが大学院進学を決意したのは、「看護を教える難しさ」を感じたからだ。「6年間の臨床経験、教育担当者の経験を経て、患者さん、学生や新人看護師、教える先輩看護師、皆が幸せになる看護教育を考えたいと思いました」。2年間自らの学習支援を分析しながら実践し、研究に没頭し、「学習者を中心に考え、教えるばかりではなく学習者の学びを支援する大切さを理解しました」と話す。

     大学院修了後、臨床に戻り同期生5人と共にCNEとしての活動を始めて1年半。「看護師が実習目標を理解し、学生に助言する姿をよく見ます」と職場の変化を感じている。「学生ならではの視点に、はっとさせられることもよくあります。学生、看護師が共に学び、育て合う文化を育み、患者さんが質の高い看護を受けられる環境をつくっていきたいです」と、若い力に期待をかける。

    学び直しへの挑戦 3年次編入

    LAのサポートを受けながら、実習室で採血の練習をする学生

     高齢化による訪問介護ニーズの拡大、スタッフの専門性を生かしたチーム医療の普及などにより、看護師の活躍の場が広がっている。全国の大学で看護系学部の新設が相次ぐなか、聖路加国際大学は先進的な改革に取り組んでいる。その一つが、今年度導入した日本初の「学士編入2年コース」だ。

     他分野の学部卒業生が看護学部に入り直した場合、2年次に編入学して3年間教育を受ける必要があった。新コースは3年次に編入し、2年間で看護師国家試験受験資格を取得できる。「本来は1、2年次に学ぶことを3年前期に履修しなければならないので、かなり厳しいカリキュラムとなります。その分『何が何でも看護師になりたい』という強い意志と向上心を持った学生が集まりました」と、佐居由美准教授は歓迎する。

     30人の初年度編入者は20~40代。経歴も多彩だ。保健医療に関わる仕事をしていた吉田裕司さんは33歳。「大学生の時に骨髄炎で半年以上入院し、看護師の温かさに触れて、仕事に魅力を感じました。ただ、文系でしたし、入院による休学で留年したこともあって、いったんは諦めました」と振り返る。

     しかしその思いは、10年経っても色あせなかった。「2年コース」の開設を知り、「通常より1年早く働き出せるし、これまで働いてきた分で学費も払える」と決意を固めた。職場は吉田さんの思いを理解し、応援してくれたという。

     入学後は朝8時半から午後5時半までぎっしり授業を受け、吸収しきれなかったところを深夜まで復習する日々を送る。「思った以上に大変ですが、『この道でよかった』とますます確信しています」と断言する。

     従来の2年次編入生も含めた「人生の先輩」の存在は、ほかの学生にも刺激を与えている。古谷七海さん(4年)は「知識の量にも対応の仕方にも、圧倒されます。グループワークなどでは的確な発言をしてくれるので、議論の幅が広がります」、山本千夏さん(同)も「小児の看護計画を立てるときには、子どもがいる学生が親の視点で意見を言ってくれて、とても参考になりました」と語る。

     注射や酸素吸入などの技術を自由に練習できる実習室では、ラーニング・アシスタント(LA)に選抜された4年生を中心に、上級生が下級生の学びを支援している。古谷さん、山本さんもLAの一員だ。佐居准教授は「同じ目標に向かう仲間が一丸となれるのが、小規模大学の強みです」と力説する。

     病院では看護師が、学内では社会性と気概を持った編入生が、学生たちの視野を広げる。先輩から受けた恩を後輩へ、という縦の循環が、聖路加ならではの看護人材を育んでいる。

    「在学中に海外研修」目標 学内制度の奨学金活用

    3カ国での留学体験を学園祭で発表する馬淵さん。「国ごとに看護の職務にも違いがあり、さまざまなことを学べました」

     外国籍外来患者が2万6580人(2016年度)を数える聖路加国際病院との法人一体化を機に、大学も14年度、聖路加看護大学から聖路加国際大学へと名称を変更した。「全ての学生を在学中に1度は海外研修へ」を目標に掲げ、学生のグローバル化にも力を注いでいる。

     「米国では論文をもとに授業が行われます。日本にいるうちから論文の英語に慣れておくことが大切です」

     11月に行われた学園祭「白楊祭」での海外留学報告会で、馬淵友理さん(4年)は語りかけた。馬淵さんは2年の時に韓国、3年でカナダに短期留学し、今年は米国シカゴのイリノイ大学で2カ月間看護を学んだ。いずれも大学主催のプログラムで、奨学金を活用した。

     小学6年の時から4年半、米国オハイオ州で暮らした馬淵さんは、現地で1人の看護師に出会った。「病気で心細くなっている私のために日本語の辞書を持ち歩き、コミュニケーションを図ってくれました。漠然と抱いていた看護師への憧れが、決定的なものになりました」

     帰国後、志望大学を看護学部に絞った。「英語以外に何か『武器』がないと、これからの世界では通用しません。迷わず私は看護を選びました」と初志を貫徹。看護力、英語力を4年間磨き上げた。

     看護師国家試験を経て、来年4月からは聖路加国際病院で働く予定だ。「病院での実習中にも何度か、外国人の患者さんの通訳をしました。自分の経験からも、在日外国人のために役に立ちたい」

     馬淵さんの視線は、さらにその先を見すえる。「聖路加の先生との出会いで研究の楽しさに目覚め、留学先で日本とのシステムの違いに触れ、看護政策にも興味が湧きました。何年か働いたら大学院に進学して成果を出し、いただいた奨学金を還元したいです」

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