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AI進化

出遅れの日本、激しい競争を勝ち抜くには何が必要か

山川宏氏

研究開発主導の2氏に聞く

 世界でAI開発競争が加速する中、日本は出遅れが指摘されている。新たな未来を切り開くための激しい競争を勝ち抜くには何が必要なのか--。日本のAI研究を主導するドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏氏と、ヤフーのチーフストラテジーオフィサー(CSO)としてAI関連事業の戦略立案を担う安宅和人氏の2人に話を聞いた。

脳に近い「汎用型」へ ドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏氏

 --開発を目指す汎用(はんよう)型AIとは何ですか。

 今、実用化されているAIは、囲碁が強いなど特定の領域でのみ使える「特化型AI」だ。これに対し、特定の領域に限らずにさまざまな課題を解決するのが汎用型AIで、人と同じように知性を持つ。地球温暖化や食糧問題といった、人の知能では解決できていない地球規模の問題の解決が期待される。

 --どのように開発を進めるのですか。

 脳の部位をコンピューターで再現し、それぞれを組み合わせて動かすことで脳全体の働きを模倣しようと考えている。人の脳に似せることで、人と似た価値観を持ち、振る舞いをするようになる。2030年ごろまでに汎用型AIを作ることを目指している。

 --世界的にAIの開発競争は激しさを増しています。

 欧米はもとより、中国の投資がめざましい。海外でAI関係のシンポジウムに参加すると、半数が中国人という印象だ。単独の組織や研究者がばらばらに開発を進めても、日本は競争に勝てない。それぞれが脳をもとにAIを作るという同じ方向性を持ち、研究者が協力することが不可欠だ。

 --15年には研究開発を支えるNPO法人を設立しました。

 日本発の汎用型AIを作るため、日本の研究機関や研究者の連携を後押しする「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」を設立した。ドワンゴのほか、トヨタ自動車や東芝などの協賛金を、東京大や理化学研究所などの研究者でつくる開発チームの支援に充てている。ドワンゴの人工知能研究所はこのチームを研究面で後押しし、完成した汎用型AIは独占せずに、誰もが利用できる公共の財産とする計画だ。【聞き手・古屋敷尚子】

安宅和人氏

「技術の応用」で勝負 安宅和人ヤフーCSO

 --日本のAI技術開発の現状は?

 グーグルやアップルなど世界的な企業が主導する米国や、新興企業の台頭が相次ぐ中国などに比べ、大きく出遅れていると言わざるを得ない。各国が巨額の国費を投じてAI産業の育成に力を入れているのに対し、日本の年間の科学技術関連予算は米国の4分の1程度で、このままでは勝負にならない。

 --他国に追いつくためには何が必要ですか。

 国を挙げて人材育成に取り組まなければならない。日本の大学は海外の大学に比べ資金力が劣っている。国の予算で、専門的な人材育成に力を入れる大学や国立研究所向けの基金を設立することなどを検討すべきだ。海外の優秀な人材を日本に取り込むための対策も重要だ。

 --どんな人材が求められるのでしょう。

 AIは大量のデータを瞬時に処理できるが、人間が社会生活の中で培う常識や「肌触りが良い」といった知覚がないので、常識や知覚を踏まえた課題を設定し、適切な解決策を実行することはできない。AIが進化しても、これらは人間の仕事として残るが、今の日本の大学新卒層には、夢を描き課題を解決する能力のある人材は少ないように感じる。小学校から、そういった能力を身につけるための教育改革も急務だ。

 --日本はAI市場で生き残れますか。

 日本は歴史的に電気やエンジンは発明できなかったが、世界で評価される自動車を開発するなど発明された技術を応用する力は優れている。今後の世界のAI市場は、AI技術を応用し、人々の生活の利便性をさらに高める段階に入るので、日本企業にもチャンスはあるだろう。【聞き手・浜中慎哉】


 やまかわ・ひろし 1965年生まれ。東京大大学院工学系研究科を卒業後、富士通でAI研究に携わる。2014年、ドワンゴ人工知能研究所所長就任。15年に「金融アーキテクチャ・イニシアティブ」を設立、代表を務める。

 あたか・かずと 1968年生まれ。東京大大学院(生物化学専攻)修士課程修了後、93年米マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2008年にヤフーに入社し、事業戦略統括本部長などを経て、12年から現職。

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