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教育改革シンポジウム

高大接続教育改革講演会 子どもを育む「評価」って何だ!?

高大接続教育改革をテーマにした一連のシンポジウムの第8、9回となる講演会には大学関係者や高校の教員らが多く詰めかけた=写真は11月15日、東京都千代田区の毎日ホール。大阪では11月27日に駿台予備学校大阪南校で行われた

“堀川の奇跡”大谷大・荒瀬克己教授が語る「新テスト」の狙い

 時代の変化に対応し、高校と大学の教育と、それらを結び付ける入試を変える「高大接続改革」が進んでいる。教育現場を知り尽くし、今回の改革作業にも携わる大谷大の荒瀬克己教授が改革の意味とその進み具合を語った。

     高大接続改革では高校教育、大学教育、大学入学者選抜(大学入試)の三つを一体的に改革する。そのための具体策として、学習指導要領の改訂、センター試験に代わる「大学入学共通テスト」の導入(2021年1月)▽高校生の基礎学力定着度を測る「高校生のための学びの基礎診断」の実施(19年度から)▽大学の「三つの方針」(入学者選抜、教育、学位授与)の策定、公表といった取り組みが進められている。

     その動きを受けて、駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社はこのほど、東京と大阪で「高大接続教育改革講演会」を開催。主に高校、大学の教員へ向け、大谷大文学部の荒瀬克己教授が「高大接続改革への願い」をテーマに話した。荒瀬教授はかつて京都市立堀川高校の校長として「探究科」を設置、課題探究型の学習を取り入れた。京大合格者を激増させるなど進学面でも実績を上げ、一連の改革は「堀川の奇跡」と呼ばれる。

     高大接続改革は本来、高校教育、大学教育、大学入試を「三位一体」で変えていくものだが、世間の関心は“入試がどう変わるのか”に集まりがちだ。それを踏まえて荒瀬教授は「今回の改革はあくまでも『教育改革』であり、教育の問題として考える必要がある」と主張する。講演の中でもとりわけ強調したのが、「多面的な評価によって、子どもたちの自己肯定感を育むこと」の重要性だ。

     日本の中高生は他国の生徒に比べて、「人並みの能力がない」「自分はダメだ」「何かをしても社会は変わらない」と感じている割合が高いという意識調査がある。荒瀬教授は「学習意欲に深く関係する項目で多くの生徒が無力感を覚えるのは、評価の方法に原因がある」と指摘した。

     「知識や思考力などの後天的に得る能力とは異なり、学習意欲は全ての人が持って生まれた能力であるはずです。そうした力が弱くなっているのは、個々の生徒に寄り添う評価になっていないことが一因ではないか。生徒が本来持っている力を発揮するためにも、評価は“次につながる”ものでなくてはならないし、対話をしながら、多様な軸で評価することが大切です」(荒瀬教授)

     堀川高校では担任、進路担当、教科担当など数十人の教員を集めて進路検討会を行い、生徒の現状や保護者との関係性などを教員同士で共有していた。生徒一人一人をさまざまな角度から捉えることで、希望を実現するための指導につなげようとしていたという。

     大学入試の変更も、このような多面的な評価という考え方が土台にある。英語4技能(聞く、話す、読む、書く)の評価や、共通テストにおける国語と数学の記述式問題導入などは、いわゆる「学力の3要素」(知識・技能▽思考力、判断力、表現力▽主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)をバランスよく見るのが目的だ。

     英語4技能評価は、英検やTOEFL、GTECなど民間の検定試験を用いて行われる。各大学は検定試験の点数やCEFR(※)に対応した段階別評価によって受験生の能力を見る。ただし、23年度までは共通テストでも英語試験を実施する。どちらの試験(または両方)を利用するのかは各大学の判断に任される。

     複数ある検定試験の中から大学入試センターがどの試験を認定するかに注目が集まるが、荒瀬教授は「学習指導要領とCEFRの段階別評価は重なっているため、CEFRに準拠している試験は、基本的には全て採用される可能性がある」との見方を示した。

    良いところを伸ばす観点が何よりも大事

     これまでのあり方から一変するだけに、講演後の質疑応答では新テストの具体像に関する質問が相次いだ。大阪会場では、国語の記述式問題について「自己採点ができるのか」「採点の公平性は担保されるのか」といった心配の声が上がった。事実、共通テストの試行調査(プレテスト、11月実施)の問題と正答率が12月4日に公表されたが、記述式問題の“難しさ”に注目が集まっている。

     こうした懸念について、荒瀬教授は「逆説的だが、自己採点ができるような力を育むのが大切。記述式問題は訓練された採点者が、明瞭な基準に基づいて採点するので、公表されているような問題であれば採点にズレが生じることはまずないだろう」と答えた。

     さらに、出願時に提出する調査書にも変更がある。資格や表彰歴など高校時代の課外活動を記載する欄が拡充され、より多様で具体的な内容を記入するようになる。これによって入試がどう変わっていくのかも気になるところだ。

     「各大学は生徒の多面的な情報を自らの基準で評価することで、その大学に合った生徒を選抜できるようになります。ただ、現行の紙ベースだと膨大な量になるので、入試に使いにくい。今後、調査書の電子化が進むことが必要です。また、生徒自身が資格や活動歴を自分で蓄積しながら、主体的に将来を考えられるような仕組みが重要になります」(荒瀬教授)

     調査書の変更はまさに「多面的な評価」の表れといえるが、一方で、子どもたちの学校生活の全てが点数化されてしまう恐れもあるだろう。東京会場ではこんなやり取りがあった。

     参加者 「多面的評価によって評価軸が増えれば、生徒の全人格を評価することにならないか」

     荒瀬教授 「生徒をがんじがらめにするのは正しい評価ではない。良いところをどう伸ばしていくか、という観点で評価をすることが大切だ」

     ところで、大学は前述した「三つの方針」に基づいて、学生を選抜、育成することになっている。それゆえ、共通テストの結果や調査書をどう活用して評価するかは各大学に委ねられている。受験生は大学側の開示を待って、対策を始めなければならないという実際的な課題も残る。

     これからの時代に必要だとされる力を見るために、従来のテストが及ばない多面的な評価を行うことは、それ自体が容易に答えを見つけにくい挑戦だともいえる。

     「(具体化までの)日程は厳しいが、ぜひ趣旨に合致した改革となるようにしてほしい。子どもたちが活躍していくための力を育む教育に変えるという、改革の根底にあるものを忘れてはならない」

     荒瀬教授はそう締めくくった。【大学通信・松平信恭】

    ※CEFR(セファール)=ヨーロッパ言語共通参照枠。初心者のA1からネーティブに近いC2まで、6段階のレベルで言語能力を評価する国際指標

    *週刊「サンデー毎日」2018年1月7・14日合併号より転載

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