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我らが少女A

2017年8月1日から高村薫さんによる新連載「我らが少女A」が始まりました。合田雄一郎刑事シリーズ最新作です。東京郊外で起きた殺人事件。過去と現在が交錯し、土地と人間が溶け合う中で、現代が浮かび上がります。

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我らが少女A

/147 第4章 27=高村薫 多田和博・挿画監修

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 浅井隆夫は合田と別れたあと、頭が火を噴くほど思いつめる。自分はいまなお世間を甘く見ているのかもしれない。事件から十二年も経(た)ち、かつての捜査責任者もいまは一線を離れているというのに、いざ相対してみると、かつてと同じ冷徹な視線があり、いまなお丁寧な言葉遣いで容赦ない事実を突きつけてくる。警大にいても、その心身も迷宮入りの事件への眼差(まなざ)しも、けっして緩んではおらず、たまたま近づいてきたかつての参考人浅井忍の父親を、食虫植物が虫を捕食するようにして、すかさず捕まえている。

 一方、捕らえられた虫は自分がいかにも無防備だったと反省してみるが、すでに遅い。忍が大宮の歯科技工所をクビになったあと、次の仕事を探すという言葉を信じた自分が甘かったのは確かだが、いまはそれ以上に、いったいどういうつもりなのか、かつての捜査関係者を探し出して付きまとっているらしいことに衝撃を受ける。社会生活のレールから一時的に脱線はしても、せいぜいシャドウバースに夢中になっている程度だと思っていた…

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