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障害者施設での虐待増加 暴力や身体拘束の根絶を

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 障害者施設の職員による虐待が増加の一途をたどっている。虐待の根絶に向けて取り組みを強化しなければならない。

 厚生労働省によると2016年度に虐待を受けた障害者は3198人。家庭や職場での虐待は認定件数も被害者数も前年より減ったが、福祉施設職員による虐待は401件、672人で前年より2割近く増え、4年連続で過去最多を更新した。

 虐待防止に向けて職員研修や綱領の策定に取り組む施設は増えているが、現場職員を指導する立場の管理者による虐待も「職員による虐待」のうち8%を占めた。施設ぐるみで虐待がはびこっている実態があるのではないか。

 証拠となる記録の隠蔽(いんぺい)を図る、虐待を通報した職員に経営者が多額の損害賠償を求めて「口封じ」をするなどの悪質な例もある。被害者の7割近くが知的障害者で、自傷他害やパニックなどの行動障害を起こす人への暴力や身体拘束が特に多い。

 以前は多くの施設で体罰が横行しており、障害者を力で抑制できる職員が現場で影響力を持つ傾向があった。行き場がなくなることを恐れて、沈黙する家族も多かった。

 しかし、1990年代後半から障害者虐待が社会問題となり、権利擁護の必要性が議論されるようになってから状況は変わってきた。

 行動障害に関しても、障害特性に合った環境やコミュニケーションに基づく支援によって改善できることが、各施設で実証されてきた。暴力による抑制や身体拘束はむしろ行動障害をエスカレートさせることもわかってきた。国も行動障害の改善に向けた職員研修を強化している。

 ところが、今も旧態依然のやり方で暴力や身体拘束を繰り返している施設は少なくない。虐待を認定されたのは氷山の一角だ。

 職員側が障害者の行動障害を引き起こしておきながら、どうしていいかわからず、また暴力や身体拘束を繰り返す。公的な補助金で運営されている福祉施設でそんな理不尽が繰り返されているのだ。

 これに対して、自治体の調査体制は弱く、虐待防止に向けた指導も甘い。政府や自治体は事態の深刻さを自覚し、悪質な施設や職員にはもっと厳しく対処すべきだ。

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