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認知症

無罪・減軽29件 鑑定せず起訴12件 本紙調査

認知症を理由に無罪や刑を軽くした判決例

 全国の刑事裁判で、被告が事件当時に認知症だったことを理由に無罪や刑を軽くした判決が近年、相次いでいることが毎日新聞の調査で分かった。過去10年間で少なくとも29件に上り、このうち半数近い12件は、起訴前の捜査段階で精神鑑定をしていなかった。認知症の影響で衝動的に万引きなどを繰り返すケースがあり、専門家は「捜査機関や裁判所は、疾患の有無や事件への影響を慎重に判断すべきだ」と指摘する。

 高齢化を背景に認知症患者が増える中、捜査や公判の在り方が問われそうだ。

 法務省によると、認知症が関連する事件や裁判についての統計はない。毎日新聞は、主要な判決を網羅した判例データベースや弁護士、検察への取材などに基づき、2008~17年の判決を分析した。

 29件の事件当時の平均年齢は70歳。主な罪名別では窃盗(15件)、殺人・殺人未遂(8件)、放火(3件)、傷害・傷害致死(2件)、強制わいせつ致傷(1件)の順に多い。年別では、08~12年は計3件にとどまるが、15年7件▽16年7件▽17年6件--など近年、増加傾向にある。

 無罪は3件で、いずれも万引き。このうち、善悪の判断や行動を制御する能力を欠く「心神喪失」だったとして責任能力を否定したのは2件。他の1件は故意がなかったと判断した。

 執行猶予や罰金にするなど刑を軽くしたのは26件。このうち、行動を制御する能力などが著しく減退した「心神耗弱」で責任能力は限定的としたのは14件。他の12件は、責任能力はあるとしたものの「衝動を抑えられない」などと認知症の影響を認めた。

 検察が起訴前に精神鑑定をしたのは15件。その多くは、裁判員裁判の対象となる殺人や放火など重大事件だった。万引きなど12件では起訴前に鑑定をせず、認知症の影響が見過ごされた疑いがある。残りの2件は不明だった。

 法務省は16年、65歳以上の受刑者の17%、約1100人が認知症の疑いがあるとの推計を発表した。高齢者全体の水準と同程度だった。実際に認知症との診断を受けたのは125人で、多くが気付かれないまま服役しているとみられる。

【原田啓之、遠藤浩二】

国の調査必要

 認知症患者の刑事事件に詳しい林大悟弁護士(東京弁護士会)の話 認知症の影響で衝動的に万引きなどを起こした場合、刑事責任能力があるか疑わしいケースが多い。しかし、認知症の種類によっては発症に気付きにくく、認知症と気付かれないまま逮捕・起訴され、有罪となるケースも多いだろう。捜査機関や裁判所は、疾患の有無や事件への影響を正しく判断する必要があり、国も実態を調査すべきだ。責任能力が認められる場合でも、刑務所で服役すると認知症が更に進行する恐れがある。地域社会で適切な服薬やカウンセリングを受けることが望ましい。

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