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不適切な画像検査

撮影増は病院利益 被ばくリスク考慮を

短期間のうちに画像検査を繰り返し依頼すると、電子カルテ上に「警告」が発せられる新システム=大船中央病院で、河内敏康撮影

 インターネットの普及で医療情報が入手しやすくなったが、患者は何を信じていいか分かりづらくなっている。海外では、医学的根拠を基に価値が低いとみられる検査や治療をリストに挙げて、過剰な医療行為を見直す動きがある。「不適切な検査や薬は何か」。コンピューター断層撮影(CT)装置を使った検査について報告する。【河内敏康、藤野基文】

 「数年前、経営サイドから『もっとCT検査をするように』と催促の紙が回ってきたことがある」。関東地方の民間病院で働く医師はこう打ち明けた。CTは、放射線の一種のX線を使って体の断面を撮影する方法。この病院にはCT装置が2台あった。医師は「CT装置の稼働率を上げたかったのだろう」と推測した。

 日本は「CT大国」と呼ばれる。経済協力開発機構(OECD)のヘルス統計2017によると、人口100万人当たりのCT装置の数は日本が107台で、加盟35カ国の中で最も多い。1000人当たりの撮影回数も231回と2番目に多い。

 日本でCT検査が多い理由の一つに医療システムの問題を指摘する声がある。日本の外来は、診察や検査をすればするだけ病院やクリニックの収入になる出来高払い。だが、検査料は1回約1万円と海外に比べ安く、「病院やクリニックはCTの検査の数を増やそうとしがちだ」(大学病院放射線科教授)という。医療政策に詳しい米カリフォルニア大ロサンゼルス校の津川友介助教は「外来の担当患者1人ごとに診療報酬が決まる『人頭支払い方式』を導入すれば、過剰検査を抑制できる可能性がある」と指摘する。

 CTは、適切に使えば病気の発見や治療に役立つが、放射線による被ばくの問題もあり、なるべく控えたい。慎重になるべきCT検査とは何か。参考になるのは、米国で始まった過剰な医療行為を見直す「Choosing Wisely」(賢い選択)キャンペーンだ。

 参加する米国小児科学会は「小児が頭を打っても頭蓋(ずがい)内損傷リスクが低ければ必要ない」と提言する。リスクを判断する基準に従って調べ、該当しなければCTは実施しない。放射線被ばくと発がんとの因果関係こそ明確でないが、小児は放射線の影響を成人より受けやすく、余命も長いため、放射線防護は特に重要とされている。日本医学放射線学会もガイドライン(指針)で推奨していない。

 それでも、医療現場では頻繁に行われているとの声がある。指針通りにして検査しなかった場合でも、後で患者の状態が悪化して頭蓋内の出血が判明するケースが極めてまれだが存在するからだ。訴訟を起こされる可能性もあるという。

 だが、藤沢市民病院(神奈川県)が、小児のCT検査に厳格な基準を持つ英国の指針を使って頭部外傷の患者の親に説明するよう変えたところ、検査数は約3分の1に減ったが、脳に損傷が見つかる重篤なケース数は変わらなかったという。放射線診断科の藤井佳美医師は「指針通りでも現時点で見逃しは起きておらず、過剰な撮影は控えるべきだ」と話す。

 専門家である放射線科医が、不適切な検査を止められない事情もある。患者の情報を一番多く持っているのは主治医で、不安感なども考慮した上での判断に反論するのは現実的には厳しい。ある大学病院の放射線科医は「『検査が必要かどうか決めるのは主治医だ』と罵倒されたこともある」と力なく語った。

 近年、診断すべき画像検査が増え、放射線科医が忙しくなったことも、主治医に助言しづらくさせているとみられる。日本医学放射線学会の調査によると、「主治医に助言する時間がない」という病院では、常勤の放射線科医1人が3~4時間のうちに診断する画像検査は24件もあり、「時間がある」病院より3割も多かった。

「医師と患者 相互理解を」

 過剰な検査を抑制しようとする動きもある。神奈川県鎌倉市の大船中央病院では、原則として過去30日以内にCTなどの検査をした患者に対し、主治医が同じ部位に同種の検査を依頼した場合、電子カルテに理由を入力しないと検査に進めないシステムを昨年5月に導入した。10月までの半年間で「重複」を通知された検査のうち、約7%を主治医が取り消したという。青木陽介・診療放射線技師は「不要な検査を減らす効果があることを確認できた。患者の被ばく低減にも役立つので他の病院にも広がってほしい」と語る。

 さらに、日本医学放射線学会主導の研究でも、医師が画像検査を依頼する時は、指針や患者の過去の検査情報を示し、検査が必要かを判断できる支援システムの開発を目指している。今年3月までに試作品の効果を検証する予定だ。

 CTなどの検査の適応問題に詳しい順天堂大の隈丸加奈子准教授(放射線医学)は「不要な追加検査や治療につながり、患者に不利益が大きいことを医師と患者が一緒になって理解し、過剰検査の抑制に取り組むことが必要だ」と指摘する。

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