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がん患者の心に寄り添う=稲垣麻由美・ノンフィクション作家

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 5年生存率5%の進行性肺がんと診断されたある男性(56)の話だ。IT関連企業に勤める3児の父は「自分が死ねば住宅ローンは終わる。残していく家族は大丈夫だ」と死を覚悟したが、愛する人との別れをリアルに感じるようになると、泣くようになった。「死ぬのが怖くて泣いてしまうのです。そんな自分が情けない……」。胸の思いを打ち明けると、医師はこう答えた。「当然のお気持ちだと思います。怖がっても泣いてもよいのではありませんか。泣くと誰かが困りますか?」。予想外の言葉に男性ははっとした--。

 2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代だ。医療の目覚ましい進歩により、がんは死に直結する病気ではなくなりつつあるが、それでもがん宣告を受けると多くの人は死を意識し混乱する。さまざまな感情と向き合う日々の中で患者の2割が適応障害になるといわれている。冒頭の男性を診療したのは、国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科長の清水研医師だ。これまでに3000人以上のがん患者やその家族の心の声…

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