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縮む日本の先に

AIと生きる/9止 不動産営業、自動で「追客」 パート、接客充実

メールとLINE(ライン)で不動産物件の接客業務をする緒賀みはるさん(右)と石丸知奈さん=松山市の不動産会社「日本エイジェント」で2017年12月、小関勉撮影(画像の一部を加工しています)

 「この表現は少しきついかな。どう返信したらいいだろう」。松山市の不動産会社「日本エイジェント」では、子育てや家事で忙しい3人のパートの主婦が、そんな会話をしながら働いている。メールや無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使って月約200件の賃貸物件の問い合わせに対応する、ウェブ専門チームのメンバーだ。勤務は午前9時から夕方まで。夜間は不動産営業用の人工知能(AI)「ノマドクラウド」がフォローしている。

     東京のベンチャー企業「イタンジ」が開発したノマドクラウドは、夜に問い合わせが来ると、すぐに確認やお礼のメールを自動送信する。返信がない場合、希望に沿った物件を選んで一定間隔でメールを送り続ける機能もある。客を追いかけるように営業することから、「追客(ついきゃく)」と呼ばれている仕事だ。

     反応がない相手に営業メールを送り続けるのはつらいし、根気がいる。真面目にやるほど負担も増していく。ノマドクラウドはそういう顧客の追客を全て引き受ける。3人は「今すぐ物件を決めたい」という優先度の高い客とのやりとりに集中できる。

     人口減少や住宅の供給過剰で、全国の空き家は急増している。地域最大手の日本エイジェントも管理する約1万3000件のうち9%程度が空いている。店頭で客を呼び込むだけではもう通用しない。そう判断して、2016年11月にチームを発足させた。

     メンバーに起用されたのは、緒賀みはるさん(50)、高須賀絵美さん(41)、石丸知奈さん(33)の3人だった。正社員として店舗で働いていたが、出産を機に退職し、パートで復職した。コミュニケーション能力、出産、子育てを経た人生経験、地域の情報の豊富さを買われた。少しずつ世代が違う「ママ友ネットワーク」を武器に、学校やスーパーマーケットの評判を集めて情報交換する。間取りや家賃だけでなく、地域の特性などそれぞれの客に合った物件を選んでいく。

     チーム発足以降、メールで問い合わせた客が物件見学や契約のため来店する「来店誘導率」は25%から52%へと倍増した。来店客の35%はウェブのやりとりだけで契約を決めている。チーム経由の客が増えたことを受け、会社は7店舗のうち1店舗を無人化した。希望すれば一度も来店せず入居できるシステムの構築を目指す。

     約20年間店舗に勤めた緒賀さんは、培った経験に自信がある。例えば景色にこだわりそうな人だと思えば、松山城が見える部屋を提案してみる。物件選びではまだまだ機械に負けない。それでもAIの機能には感心させられる。

     単身者向けの物件を探していた客に、ノマドクラウドは追客メールを送り続けたが、一度も反応はなかった。半年ほど過ぎたころになって、「いつもメールをありがとうございます」と返信が来た。今度は2人で住む部屋を探しているという。「結婚でもするのかな」。チームの3人はそんな話をしながらやり取りを引き継ぎ、契約にこぎつけた。

     技術はどんどん進化していく。それを使いこなすのは自分たちだ。未来に向かって、人はAIとともに生きていく。【小林多美子】=おわり


    全国の空き家状況

    空き家率、35年で倍増

     2013年に総務省が行った調査によると、空き家は全国で約820万戸あり、住宅総数(6063万戸)に占める割合は13・5%と過去最高となった。1978年(7・6%)に比べ倍近くになっている。

     都道府県別で空き家率が高いのは(1)山梨(17・2%)(2)愛媛(16・9%)(3)高知(16・8%)。野村総合研究所は33年には空き家が約2170万戸まで増え、空き家率は30・4%にのぼると予測している。

     13年時点の賃貸物件の空き家率は住宅全体よりも高い18・8%。現在の調査が始まった03年の17・6%から微増している。

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