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SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『グループサウンズ文化論』『注文をまちがえる料理店の…』ほか

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今週の新刊

◆『グループサウンズ文化論 なぜビートルズになれなかったのか』稲増龍夫・著(中央公論新社/税別1600円)

 1965年にザ・スパイダースが「フリフリ」をリリース、71年にザ・タイガース解散。グループサウンズ(GS)の寿命は短く、評価も低い。正統的な歴史的評価が必要と、稲増龍夫が関係者と語り合った。

 『グループサウンズ文化論』は、岸部一徳、堀威夫、すぎやまこういち、宇崎竜童、近田春夫、亀和田武などが証言する、一級のGS文献だ。岸部は当時の熱狂を、移動の際「交差点の信号を全部止めて警察が交通整理し」たと回想。すぎやまは、演歌中心だった「日本のポピュラー音楽の大きな革命」であったとGSを評価する。

 稲増は、ビートルズが伝説になったのに、一方GSは「カラオケで、おじさんたちが懐メロとして歌っている」と嘆く。しかし、70年代フォークやロックだって、すでに懐メロだ。

 一番驚いたのは、著者がGSシングル盤のコレクターで、30年をかけ436枚を完璧に収集し、総費用は600万円という。その執念は本書に乗り移っている。

◆『注文をまちがえる料理店のつくりかた』小国士朗・著(方丈社/税別1600円)

 コンビニ、ファストフード店などで、店員のミスにキレて、客が怒鳴る光景を目にする。不寛容が悪性の伝染病のように蔓延(まんえん)し、社会がギスギスしてきた。

 そんな中、顔がパッと明るくなる本が出た。『注文をまちがえる料理店のつくりかた』は、タイトルから痛快だ。認知症の人が働く料理店であれば、ときに「注文をまちがえる」。著者の小国士朗はテレビ局ディレクターだが、発起人となり、3日間だけ、本気でそんな店をオープンさせた。

 ぺろりと舌を出したロゴ「てへぺろ」を旗印に、難ありの老人たちが生き生きと接客する。勝子さんはいきなり注文をまちがえるが、どこ吹く風で「ごめんねぇ」と謝り、「鼻歌交じりにテーブルからテーブルを渡り歩きます」。「普通のレストランより、エンターテインメントだ」と客も喜ぶ。

 3日間だけだから起きた奇跡かもしれない。しかし、ここに硬直した認知症への偏見を壊すカギがある。それは大切なカギだ。

◆『Dの遺言』柴田哲孝・著(祥伝社/税別1800円)

 柴田哲孝『Dの遺言』の「D」はダイヤモンド。戦後の混乱期、日銀の金庫から消えたダイヤは20万カラット。GHQが盗み出したとも、日本の政権運用資金に使われたとも言われる。東大教授にして作家の浅野迦羅守(がらむ)を中心に、4人の腕利きが消えたダイヤを追う。紅一点である伊万里の実父・継父ともに、「M資金」に巻き込まれ殺されていた。残されたブルー・ダイヤモンド。脅しの電話、「源氏物語」にまつわる暗号、そしてフリーメイソンと、昭和史の闇を切り裂く超絶のエンタメ長編だ。

◆『南方熊楠』佐藤春夫・著(河出文庫/税別780円)

 佐藤春夫がこんな評伝小説を書いていたとは。強靱(きょうじん)な頭脳と博識を備えた博物学の巨人が『南方熊楠』。2017年は生誕150年だった。その全貌を明らかにすべく、3月4日まで東京・上野「国立科学博物館」にて企画展を開催中。著者は熊野の同郷であった。面白おかしく誇張した「熊楠伝説」と距離を置き、あたう限り正確な記録をもとにして、その人間像に迫った点で、本書は熊楠研究の基礎となった。「この不可思議千万な存在」とは熊楠の「粘菌」評だが、熊楠もまたそうだった。

◆『人生ごっこを楽しみなョ』毒蝮三太夫・著(角川新書/税別840円)

 毒蝮三太夫は、我々の世代では「ウルトラマン」のアラシ隊員。高齢者世代では、半世紀近く続くTBSラジオ「ミュージックプレゼント」の「マムちゃんだよ!」だろう。「きったねぇババアだな」呼ばわりして喜ばれるのだ。下町育ち、81歳の現役タレントが『人生ごっこを楽しみなョ』と、生きる秘訣(ひけつ)を開陳する。「要は、チャーミングなジジイやババアになってほしいんだ」。「若い人が『ああいう年寄りになりてぇな』って思うような年寄りをたくさんつくりたい」と、提言多し。

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岡崎武志(おかざき・たけし)

 1957年、大阪府生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。主な著書に『上京する文學』『読書の腕前』『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』など

<サンデー毎日 2018年1月21日号より>

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