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日本映画

撮影終了「一茶」も公開未定 お蔵入りの訳とは

 昨年秋に公開予定だった俳人、小林一茶の生涯を描く映画「一茶」が、撮影を完了しながら、製作会社の破産などで公開できない事態に陥っている。背景を探ると、日本映画界特有の事情がみえてくる。【木村光則】

     一茶は藤沢周平の小説が原作。映像制作会社「オフィスティーエム」(今井貢代表)を幹事会社に製作委員会が作られた。吉村芳之監督の下、人気俳優のリリー・フランキーさん、佐々木希さんらが出演し、2016年秋に長野県飯山市などで撮影を行った。

     同社は独立行政法人・日本芸術文化振興会から16年度、2200万円の助成を受けた。17年1月には全ての撮影を完了。2月に吉村監督が死去したものの、3月には未完成ながら仮の試写会も開かれた。同年度の助成先には大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」などがある。

     ただ、誤算は3億円の出資を約束した一般財団法人の支払いが滞ったことだ。同社が費用を立て替えつつ撮影を続けたが、同年10月に破産手続きの開始を決定。ギャラなど約1億7000万円が未払いのままだ。

     芸術文化振興会も1年程度での公開が助成の条件で、助成金の返還を請求中だ。資金計画の甘さを見抜けなかった形だが、助成の審査に当たった経験もある映画評論家は「有名な俳優が出演して配給先も内定しており、信用してしまったのでは」と指摘する。

     一茶のスタッフや飯山市の一般社団法人・信州いいやま観光局などは先月、「映画『一茶』を救う会」を設立。代表理事で映画監督の南柱根さんは「一日も早く完成させ、公開にこぎ着けたい」と理解を求めている。

        ◇

     実は撮影に入りながら、さまざまな事情でお蔵入りした邦画は少なくない。アニメ映画「崖の上のポニョ」の主題歌を歌った人気子役を主人公に配した映画「大好きなクツをはいたら」は10年、静岡県沼津市などで撮影を進めたが、子役の芸能界引退と共に公開中止が決まった。資金調達のメドが立たなくなったためとされる。千野皓司監督の「THWAY 血の絆」(03年)や小林政広監督の「気仙沼伝説」(06年)など、作品が完成しても配給や宣伝に関する経費が調達できず、一般公開されていない邦画も数多い。

     背景には、映画の資金調達が難しい日本特有の事情がある。フランスや韓国では、映画の入場料からチケット税を徴収して集めた資金を元手に、映画の製作前から製作後の興行に至るまで、きめ細かく助成する制度がある。一方、日本では何とか資金を集めて映画を撮影しなければ助成金も受け取れない。

     世界の映画製作事情に詳しい深田晃司監督は「日本で独立系の映画を製作しようとすると資金面の無理が生じ、見切り発車で撮影に乗り出すケースも多い。フランスや韓国のように、業界内で循環する資金を映画人が運営する仕組みならば、もっと柔軟な支援ができるのでは」と提言している。

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