メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

SUNDAY LIBRARY

小林 聡美・評『幼ものがたり』『100年の木の下で』

◆『幼ものがたり』石井桃子・著(福音館文庫/税別750円)

◆『100年の木の下で』杉本りえ・著(ポプラ社/税別1400円)

 『クマのプーさん』『ピーターラビット』などの翻訳で知られる石井桃子さんが亡くなられて今年で10年だそうだ。子供のころ手にした本がだれの翻訳によるものかなど、当時意識したことはなかったが、私も少なからず石井さんのお世話になっていたはず。石井さんは児童文学の翻訳のほかにもご自身で物語や随筆を書いておられ、私は石井さんの随筆も好きだ。どこか柔らかくて、押しつけがましくなく、誠実な文章。図々(ずうずう)しいかもしれないが、祖母の話を聞くような、そんな気分になる。ちょっと気持ちが疲れた時など、石井さんの文章を読むと心が落ち着く。そしてはるか昔のことを本当によく覚えていらっしゃるのには、感心を通り越して驚嘆するのだった。

 1981年初版の『幼ものがたり』は、そんな驚異の記憶力を持つ石井さんの、文字通り幼少時代を綴(つづ)ったもの。埼玉県の浦和で生まれ、6人きょうだいの末っ子として育ち、生涯独身だった石井さん。きょうだいがみな亡くなり、家族のただひとりの生き残りになった時、そのきょうだいたちは石井さんが4、5歳だったころの、若者、娘となって石井さんの心に戻ってきた。かれらは70年ほど前の出来事をはっきりと石井さんに…

この記事は有料記事です。

残り923文字(全文1493文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. アップルがアプリストアから「フォートナイト」削除 手数料巡り「バトル」激化

  2. 犬の散歩中、男性はねられ死亡 運転の大学生「LINE来たのでスマホを」

  3. まさかの「車道」でも 沖縄、あまりにも多い「路上寝」 年7000件超、死亡事故も

  4. 「高熱でも宿泊拒否できない」旅館業法 GoToは大丈夫か ホテル苦慮

  5. 東京・足立の住宅に500人分の人骨 標本業者が放置か

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです