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「おひとりファースト」の時代へ~ミドルおひとり女子が創る、大独身マーケット

「『おひとりウーマン』消費!」出版記念 特別対談 牛窪恵×三浦展(1) “個”を生かしながら人とゆるくつながる時代

 12月8日に発売された、新刊「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」(毎日新聞出版)で、40・50代の独身女性のリアルを描いた、マーケティングライターの牛窪恵さん(以下、牛窪)と、11月13日発刊の著書「中高年シングルが日本を動かす 人口激減社会の消費と行動」(朝日新書)で、団塊ジュニアをはじめとした中高年シングルの消費動向に迫った、消費社会研究家の三浦展さん(同じく三浦)。今回からは2回連続で、このお二人が、ミドル年齢の「おひとり様」の消費と深層心理に迫ります。

    年齢を重ね、消費も“男前”に

    牛窪恵さん

    牛窪 お久しぶりです。偶然にも、私より1カ月早く、中高年シングルの本を出されたと聞いて、改めて三浦さんとのご縁のようなものを感じています(笑い)。長年、男女の消費実態を調査・分析して来られた三浦さんですが、近年、シングルに限らず中高年の男女全般について、何か顕著な傾向を感じてらっしゃいますか?

    三浦 まず男女問わず、中高年シングル全体について言えるのは、「健康志向」です。食べ物で言えば、男性の「ヨーグルト」消費が上がっている。いまや男性は60歳を過ぎても働くのが当たり前の時代になり、健康で長く働けるようにしておかないと、との気持ちが高まっているように感じます。

    牛窪 「ヨーグルト=健康」のイメージも強いですからね。

    三浦 でも実は、2002年の家計調査(総務省)を見ると、ミドル男性のヨーグルト消費は「ゼロ円」だったんです。とくに、おひとり様の男性は、健康管理を奥さんにやってもらえない、ひとりで生きるためには自分でケアをしなければ、と考えやすい。その流れからも、「ヨーグルトを食べておこう」となるのではないでしょうか。

    牛窪 健康管理でいうと、人間ドックや医療費は?

    三浦 はい、やはり男女問わず伸びています。今後も伸びが期待できるでしょう。とくに団塊ジュニア以降は、リスク回避意識が高いですから、「病気にならないように」「病気を早く察知するために」予防にお金をかける、あるいはなった後の就業不能保険に入るなどの傾向が高まるのではないでしょうか。

    牛窪 一方で、女性の間で健康志向が高まっているのは、同じように「仕事」への意識とも何か関係があると思われますか?

    消費社会研究家の三浦展さん

    三浦 そうですね。女性も近年、既婚者については、子育てが終わった50歳前後から「パートタイムというレベルではなく、もう少し本格的な仕事に復帰したい」といった気持ちの高まりを感じます。そのためにも健康でい続けなくては、と考えるのでは?とくにバブル世代は「正社員経験」をした女性が多いので、子育て後にやりがいのある仕事をもう一度、と考えやすいと思います。

    牛窪 弊社のオフィスにも、子育て後に復職した女性スタッフが何人かいます。

    三浦 ちょうど「(男女雇用機会)均等法」の第一世代は、トップが54歳ぐらいでしょう。年齢的に、第2子も社会に出ている女性が多いはずなので、仕事への復帰意欲が高いのではないでしょうか。

    牛窪 その他の消費はどうですか?男女で差を感じる部分はあるでしょうか。

    三浦 直近5年の家計調査でいうと、60歳以上のシニア女性のクルマ購入費が、グッと伸びていました。団塊世代は女性の運転免許保有率が顕著に高まった世代。子育てしながら買い物にもクルマを利用し続けてきた女性たちですが、シニアになってからドライブを楽しんだり、孫の世話に利用したりするのでしょうか。

    牛窪 団塊世代は、女性もクルマ好きな世代ですからね。

    三浦 食生活を見てもアメリカンなライフスタイルを維持しつつ、年を重ねているのが、かつてのシニア世代との違いですね。あとは、若い女性の「甘くないお酒」の購入費や、焼肉代も増えています。

    牛窪 お酒と焼肉ですか。これはまた、随分と「男前」な!

    ペットや歯に数十万円かける理由

    三浦 そうなんです。一方で男性は、消費のうえでは「女性化」しています。同じく家計調査を見ると、インテリアにお金をかける傾向が、ヤングからシニアにまで波及しています。ソファや照明、カーテンの購入費も伸びています。いまやインテリア関連の商品を、どこでも気軽に買えるようになった。「ニトリ」の影響もありそうです。

    牛窪 なるほど。お酒について、男性はどうですか?

    三浦 ミドル男性のアルコール購入費は減っていますが、ワインや甘いお酒は伸びているんです。要するに、「老若男女が似てきている」と言えますよね。

    牛窪恵さん

    牛窪 女性はクルマで出掛けるなど、外交的で「甘くないお酒」を好む傾向が顕著になり、男性はスマホやパソコンを使ったネット通販やネットゲームのファンが増えるなどインドア派になって「甘いお酒」を好むようになってきた……。まさにボーダーレス社会ですね。私は約10年前、当時の20代半ば前後(現30代半ば前後)の若い男性を指して「草食系男子」と呼びましたが、いまや若者だけでなく、上の世代もそうなんですね!

    三浦 「ボーダーレス」で言えば、男女や年代問わず「おしゃれ志向」も目立っています。たとえばミドルでは、コンタクトレンズ。シニアもそうで、金額的にはわずかですが、男女ともコンタクトレンズの装用者が目立ってきた。カラーコンタクトを装用する「カラコンミドル」も増えているようですよ。

    牛窪 カラコンミドル!周りにもいますね。「歯」はどうでしょう。

    三浦 消費額を見ても、歯のホワイトニングや歯列矯正、歯ブラシ、歯磨きなどに関する伸びは顕著です。白く奇麗な歯で眼鏡をかけない、若々しいシニアになりたい、との願望もありそうです。

    牛窪 今回私が取材した「おひとりウーマン(40、50代の独身女性)」たちも、一様にホワイトニング志向が高かった。横浜市で働くある女性は、なんと毎月1回、九州まで飛行機で歯の矯正に通っていました。「自分の歯にここまでお金や時間をかけられるのも、この年齢(49歳)の特権でしょう」と。

    三浦 それはすごいですね。「お金を出し惜しみしない」ということでは、男女問わず「ペット」関連の費用も伸びていました。特に伸びが激しいのが、動物病院代。

    牛窪 ペットの寿命も延びましたものね。

    三浦展さん

    三浦 知り合いも、犬の手術代に20万円かけていました。おひとり様でペットを飼っている人は、実は1割。でも、飼っている人は、ペット関係に30万円使っている。だとすれば、自分の洋服に使うお金もなくなりますよね。バブル世代も含めて、洋服・下着代は減っています。

    “個”を生かしつつ周りとゆるくつながるには?

    牛窪 洋服については、ファストファッションや「メルカリ」などフリマアプリの登場も影響していると思いますが、単価うんぬんだけではなく、百貨店や専門店で「買う機会」自体も減っていますよね。取材した中には、「会社に福山(雅治)でもいれば、毎日おしゃれして通うけど、オジサンしかいないんだもん」、だからお洒落する気力も湧かない、と嘆く40代女性もいました(笑い)

    三浦 見た目より中身の健康、という意味では、マッサージやスーパー銭湯への消費も、男女問わず増えていました。

    牛窪 なるほど、私の取材でも多かったです。マッサージや整体、はりなどに消費するおひとりウーマンが。技術や出店規模の拡大もありますが、全般的に「コト消費」が伸びているんでしょうか?

    三浦 やっぱり「サービス」にお金を使う時代なんですよね。ただ、女性でいえばミドルはクルマと家具も買っています。

    やっぱり元気なミドルとシニアの女性には注視が必要。バブル世代が60代になるまでは、消費市場の中心として期待できるでしょう。堅実な団塊ジュニア以降は、わかりませんが。

    牛窪 あとはやっぱり「旅」。女性は、旅行欲求も高いですよね。

    三浦 旅行に関しては、パック(ツアー)旅行は伸びず、やはり一人旅、二人旅の伸びが顕著です。お話ししたように、総じて女性は外向的ですから、移動についても「クルマ」にお金をかけたり、「健康」に配慮したりして、いつまでも自分の手や足で移動したい、との思いが強いのでしょう。

    牛窪 住まいはどうですか? 近年、「シンプルライフ」を求める傾向も顕著ですが。

    三浦 3年ほど前、あるリノベーションのアイデアコンテストが行われました。その優秀賞が、50代で結婚したカップルの、ミニマムな家だったんです。

    50代といえば、今まで多くのモノを買ってきた人たち。彼らが結婚を機にモノを捨て、いわゆる「ミニマリスト(必要最小限の物だけで暮らす人)」になり、築40年のマンションをリノベーションして住む。いまや40、50代の未婚者、離別者は多いですから、こうした男女も今後、増えますよ。

    牛窪 ミニマリストのように「持たない暮らし」を標ぼうする、という意味では今回、おひとりウーマンの取材で「家を買うのでなく、シェアハウスに住みたい」との声も多く聞かれました。独身女性はとくに、将来「(ひとり)ぼっち」になる不安を考えると、誰かとつながっていたい、との概念が強そうなのですが。

    三浦 一般に、女性は男性よりコミュニケーションが上手ですし、「シェア」や「共に」何かをする、といった志向は確実に進んでいくと思います。シェアハウスだけでなく、「okatteにしおぎ」のように、「食」をテーマにした街のパブリックコモンスペースも増えていくでしょう。

    牛窪 いまよりも、ミドル年齢の女性が生きやすい時代になるでしょうか?

    三浦 その意味で、避けて通れないのは「親の介護」です。介護問題は、早くもバブル世代を直撃し始めています。彼女たちは本来、消費意欲が高い世代ですが、親の介護にあたっている女性たちからは、すでにいろんな声があがっているのです。

    牛窪 やはりそうでしたか。次回はぜひ、彼女たちのリアルな生声についてもお聞かせください。

    三浦展(みうら・あつし) 社会デザイン研究者 1958年生まれ。82年、一橋大学社会学部卒業。(株)パルコ入社。マーケティング情報誌「アクロス」編集室勤務。86年、同誌編集長。90年、三菱総合研究所入社。99年、「カルチャースタディーズ研究所」設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。著書に、80万部のベストセラー「下流社会」のほか、主著として「第四の消費」「家族と幸福の戦後史」「ファスト風土化する日本」がある。その他、近著として「データでわかる2030年の日本」「日本人はこれから何を買うのか?」「東京は郊外から消えていく!」「富裕層の財布」「日本の地価が3分の1になる!」「東京郊外の生存競争が始まった」「中高年シングルが日本を動かす」など多数。

    「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー(毎日新聞出版・1450円)

    「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」(毎日新聞出版)

     コラムの筆者・牛窪恵さんが40・50代の独身女性や関連企業約40社を半年以上取材し執筆した最新刊「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」が毎日新聞出版から発売されます。「おひとりウーマン」とは、みずから働き、気持ちのうえでも自立した、40、50代の大人の独身女性。「おひとりさまマーケット」「草食系男子」などの流行語を世に広め、数々のテレビ番組のコメンテーター出演でもおなじみの著者が、13年間ウォッチングを続けてきた「おひとりウーマン」の消費志向やライフスタイル、恋愛や結婚願望に深く迫ります。amazonでの購入はこちらからどうぞ。

    牛窪恵

    世代・トレンド評論家。マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)通学中。 オフィシャルブログ:アメーバ公式ブログ「牛窪恵の「気分はバブリ~♪」」(http://ameblo.jp/megumi-ushikubo/
    財務省 財政制度等審議会専門委員、内閣府「経済財政諮問会議」政策コメンテーターほか、官庁関係の要職多数。
    1968年東京生まれ。日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。
    トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。テレビコメンテーターとしても活躍中。
    【代表作】
    『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞社)
    『独身王子に聞け!』(日本経済新聞社)
    『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)
    『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)
    『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
    『「男損(だんそん)」の時代』(潮出版社)
    『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』(毎日新聞出版)ほか多数

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