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「おひとりファースト」の時代へ~ミドルおひとり女子が創る、大独身マーケット

「『おひとりウーマン』消費!」出版記念 特別対談 牛窪恵×三浦展(2) 幸せへの鍵は「コミュ力」と、女性の「経済力」、男性の「生活力」

 前回、40・50代の自立した独身女性「おひとりウーマン」の動向を中心に、現代の中高年男女やミドルおひとり様の消費傾向について、対談形式で示唆を下さった、消費社会研究家の三浦展さん(三浦)と、マーケティングライターの牛窪恵さん(以下、牛窪)。今回は、おひとり様の今後の生き方や働き方、アラフィフ年齢からの「結婚」をどう考えるかなどについて、深く掘り下げていただきます。

    75歳まで年金がもらえない時代に!?

    牛窪恵さん

    牛窪 前回、ミドル年齢の女性にとって、今後発生するであろう「親の介護問題」と、そのことが消費にも少なからず影響を与えるだろうことをご指摘いただきました。三浦さんは近年、40、50代女性を巡る親の介護問題を、どう見ておられますか?

    三浦 まず三菱総研のデータで、介護すべき親御さんがいる女性のうち、最も不満が大きいのは50代です。他の年代は、生活満足度と親の介護との間に、ほとんど相関関係が見られません。これはおそらく、50代女性こそが働きながら介護をする当事者が多いからだと思われます。

    牛窪 今後、ミドル年齢の独身女性が「働きながら親を見る」ことができるのか、は大きな課題ですよね。介護は子育てと違って、いつ始まっていつ終わるのかが、非常に不透明ですから。国によって昨年(2017年)、「改正育児・介護休業法」が施行されるなど、企業に20年までに介護休暇を導入するよう促していますが、企業がそれを実行できるかといえば、難しい側面が多々ありそうです。

    三浦 とはいえ、女性も確実に働き続けるケースが増えるでしょう。私は以前、拙著「日本の地価が3分の1になる」(光文社新書)で指摘したのですが、団塊ジュニアがシニア年齢になるころには、75歳まで働く可能性があります。

    牛窪 75歳! 団塊ジュニアといえば、いま40代前半~半ばですよね。親御さんが人口最大のボリュームゾーンである団塊世代ぐらいにあたり、病院や施設のベッド数が足りず、「自宅で親を見る」が基本になるのではないか、と言われている世代で……。

    三浦展さん

    三浦 年金の問題を別にしても、仮に「70歳定年」だとすると、最低であと25年、長ければ30年くらい働くことになりますよね。その意味でも、男性だけでなく女性も含めて、長期的な働きやすさを見据えた「働き方改革」を、真剣に考えていかねばなりません。

    牛窪 可能でしょうか?

    三浦 不可能ではないですよ。彼女たち団塊ジュニアは、たとえば「国道16号沿い」など、郊外で生まれ育った男女が多い世代です。今後は必ずしも企業の本社に出社せず、家や自宅近くで働いていい、という「サテライトオフィス」や「テレワーク」が本格化しますから、郊外で仕事をしながら、親を見たり仲間と集ったりできるようなコミュニティーを創っていけるといい。実際、最近、16号沿線の郊外で、コミュニティー向けの新しいスナック、喫茶店、小料理屋を、住民自身がする事例が出てきました、

    牛窪 確かに、コミュニティーのようなものも、都心より自宅に近い郊外の方が作りやすそうです。

    三浦 しかも、ひとり暮らしのおひとり様が23区内に多いのに対して、親と同居するパラサイト・シングルは、千葉や埼玉の郊外に多いんです。

    牛窪 なるほど。40代でも、ひとり暮らしよりパラサイトのおひとりウーマンのほうが多い(約6割)ですから、これは有望ですね。反対に、都心にはお年寄りが増えそう。クルマを運転できない高齢者が増えて、どんどん駅前型になって。

    三浦 今後、都心はどんどんビルだらけになって、町としてつまらなくなっていくかもしれません。しかし郊外もこれからおひとり様シニアが増える。ですが、郊外でも働けて、都心の半分の値段で同じ美味しいものを食べられるようになると、ジュニア世代も生まれ育った街に住みたいと思うでしょう。職場やおいしい店が集まるエリアから5駅内に自宅があれば、こんなにいいことはない。

    牛窪 まさに、吉祥寺はそんな感じの場所ですよね。

    三浦 そうです。吉祥寺が「住みたい町」の上位にあげられるのは、「おしゃれなカフェや雑貨屋があって、消費の場としておもしろい」というだけではない。銀行からカフェまで多様な働く場所があるということなんですよ。だから、働き方改革が本格化して、郊外でも働ける場が増えると、町の構造が変わると思います。

    アラフィフ年齢からの「逆転ハッピー」も

    牛窪恵さん

    牛窪 今回、私が取材した中でも、三浦さんが「シンプル族」と呼ぶような自然体の団塊ジュニアはとくに、吉祥寺のような郊外に住みたい、と口にしていました。もともと変に見えを張らず、工夫を凝らしたり、自分たちでコーディネートしたりしてきた世代ですから、上のバブル世代より現実的なのかなと思います。

    三浦 団塊ジュニアは、初の「就職氷河期」(93年)に当たるなど、就職活動で不利だった世代で、その後、「下流中年」や「パラサイト・シングル」などと言われてきました。でも今後、働き方が変わることで、挽回できる可能性もあります。

    牛窪 それはうれしいお知らせ! アラフィフからの「逆転ハッピー」ですね。具体的には、どんなふうに?

    三浦 彼らは人口が多いので、さまざまな改革や価値観の転換をしていかないとみんなが幸せにはなれません。たとえば、「子どもは産まないけれど、40代になってから結婚はする」とか、「今まで非正規で給料が低かったけど、さすがに40代を過ぎるとある程度の給与になる」とか、あるいは「郊外でも正社員で、サテライトで働ける」といった具合に、今までとは違う価値観とライフスタイルをつくっていくべきです。

    牛窪 従来の既成概念を取り払った「仕事観」や「結婚観」が根付く可能性も、十分あるということですね。確かに団塊ジュニアに取材すると、あえて自由度が高い非正規雇用の道を選ぶ、でもそれなりに稼いでいる、というパターンも多く目にします。

    三浦展さん

    三浦 非正規でもキチンとスキルアップして、年収300万円、400万円ぐらいは稼げる女性も増えています。そういう女性が、たとえば、50歳ぐらいになった時に、年収400万~500万円稼げるようになったとする。そこまで来るには、ずいぶん長い道のりだったと思うかもしれない。でもそこでやはりずっと契約社員だったが50歳で600万円稼げるようになった男性と一緒になれば、世帯年収で1000万円以上になるんですよ。

    牛窪 そう考えると、おひとりウーマンたちも希望が湧いてくると思います。取材した中にも、最近「アラカン(60歳前後)」で初めてご結婚された阿川佐和子さんに共感する女性が、何人もいました。結婚だけなら、いくつからでも遅くないと。

    三浦 そう。出生率の向上には貢献しないかもしれませんが、「個人の幸福」という観点では、最終的に豊かに暮らせるカップルが増えていく可能性がある。女性がある程度の経済力を身に着ければ、阿川さんのようにアラカンになって「佐和子婚」するのもいいし、歌手の藤あや子さんのように、自分よりおそらく経済力はない25歳も年下の男性と、「あや子婚」してもいいわけです。

    牛窪 私が取材した中に「アラフィフ婚」を果たした女性が何人かいるんですが、「本気で婚活しなきゃ」とわざわざ一流企業を退職して、半年後に結婚を決めた女性もいました。

    「なぜそこまで?」と聞くと、「40代までで、仕事に生きる人生は十分経験した。50歳を過ぎて初めて、『やっぱり女として生きる人生を、一度は経験してみたい』と思ったんです」と。

    幸せへの鍵は、女性の「経済力」と男性の「生活力」

    三浦 「生涯未婚率」は、国が子どもの出生数を推計するために設定したものにすぎません。本人にとっては、結婚はいつしたっていい。出産さえ考えなければ、「やっぱり人生の最期に向けて、伴侶が欲しいから」といった結婚が増えるのは当然なんです。

    牛窪 過去に、結婚紹介所への取材で、「40、50代になって結婚できる男女の特徴は?」と聞くと、ほとんどが異口同音に「柔軟性のある人」と答えました。三浦さんは、どうお考えですか?

    三浦 そうですね、ミドル年齢で「いざ結婚」と考えた時に選ばれる男女は、「経済力のある女性」と、「生活力のある男性」だと思います。あとは、コミュニケーション力ですよね。

    牛窪 分かります、価値観の相性を見るにも、「コミュ力」、大事ですよね。あと、女性にとっての経済力や男性にとっての生活力は、いずれも「自立している」ということと、ほぼ同義でしょうし。もっとも独身に限らず、既婚者にとっても、おひとり様意識を持つことは大事でしょうが。

    三浦 実は家計調査を見ると、ひとり暮らしのミドルはこの5年で「お墓代」が増えているんです。団塊世代より若い世代が、早めに買っている。シングルは自分のことを自分でしなければならないから、健康管理や料理と同じく、お墓も「自分で買っておこう」となるのでしょう。

    牛窪 自立心が強いわけですね。

    三浦 既婚男性も、いずれは「1対2」の割合で(既婚女性は「2対1」で)、妻(夫)に先立たれます。そう考えると、男性は自分で生活できる力を、女性は稼げる経済力をつけることが、既婚・未婚問わず、お互いにいいことだと思います。

    牛窪 その通りですね。個人の幸福は人それぞれ、人生もいつ何が起こるか分かりません。

    三浦 今後、「75歳まで働いて、90歳、あるいは100歳まで生きる」となると、50歳はやっと折り返し地点に過ぎない。独身の男女がこれから巻き返しを図るチャンスは、いくらでもあります。

    牛窪 結婚も含めて、諦める必要はない、ということですね。

    三浦 もちろんです。若い時は良かったけれど、年を取ってからダメだった、というより、若い時はあまりいい思いをしなかったけれど、50歳過ぎてから幸せになれた、というほうがいいでしょう。年齢などまったく気にせず、自分なりの幸福を求めればいいんです。

    牛窪 今回、40、50代のおひとりウーマンたちを34人取材しましたが、多くはいわゆる「だめんず(だめな男性)」に人生を翻弄(ほんろう)されていました。世の中にはひどい男もいるのだなと、本当に頭にきたし、彼女たちを気の毒に思ったのですが、今日の三浦さんの言葉で、希望が見えた気がします。

    三浦 希望を持つことは大事です。「自分たちは幸せになれない」と思っていると、消費もしないものなのです。その意味でも、日本の第二の人口ボリュームゾーンで、これまであまりいい思いをしてこなかった団塊ジュニアを、いかに「幸せなミドル、シニア」にできるかが、これから先20年の、日本の大きな課題になるでしょう。

    牛窪 私もぜひ、彼女たちおひとりウーマンの皆さんに、今後も希望を発信し続けたいと思います。今日はどうも、ありがとうございました。

    牛窪恵さん(左)と三浦展さん

    三浦展(みうら・あつし) 社会デザイン研究者 1958年生まれ。82年、一橋大学社会学部卒業。(株)パルコ入社。マーケティング情報誌「アクロス」編集室勤務。86年、同誌編集長。90年、三菱総合研究所入社。99年、「カルチャースタディーズ研究所」設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。著書に、80万部のベストセラー「下流社会」のほか、主著として「第四の消費」「家族と幸福の戦後史」「ファスト風土化する日本」がある。その他、近著として「データでわかる2030年の日本」「日本人はこれから何を買うのか?」「東京は郊外から消えていく!」「富裕層の財布」「日本の地価が3分の1になる!」「東京郊外の生存競争が始まった」「中高年シングルが日本を動かす」など多数。

    「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー(毎日新聞出版・1450円)

    「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」(毎日新聞出版)

     コラムの筆者・牛窪恵さんが40・50代の独身女性や関連企業約40社を半年以上取材し執筆した最新刊「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」が毎日新聞出版から発売されます。「おひとりウーマン」とは、みずから働き、気持ちのうえでも自立した、40、50代の大人の独身女性。「おひとりさまマーケット」「草食系男子」などの流行語を世に広め、数々のテレビ番組のコメンテーター出演でもおなじみの著者が、13年間ウォッチングを続けてきた「おひとりウーマン」の消費志向やライフスタイル、恋愛や結婚願望に深く迫ります。amazonでの購入はこちらからどうぞ。

    牛窪恵

    世代・トレンド評論家。マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)通学中。 オフィシャルブログ:アメーバ公式ブログ「牛窪恵の「気分はバブリ~♪」」(http://ameblo.jp/megumi-ushikubo/
    財務省 財政制度等審議会専門委員、内閣府「経済財政諮問会議」政策コメンテーターほか、官庁関係の要職多数。
    1968年東京生まれ。日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。
    トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。テレビコメンテーターとしても活躍中。
    【代表作】
    『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞社)
    『独身王子に聞け!』(日本経済新聞社)
    『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)
    『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)
    『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
    『「男損(だんそん)」の時代』(潮出版社)
    『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』(毎日新聞出版)ほか多数

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