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余録

作家の向田邦子さんは女学校時代…

 作家の向田邦子(むこうだ・くにこ)さんは女学校時代、東京大空襲に遭う。辛くも生き延びた翌日、「次は必ずやられる。最後にうまいものを食べて死のうじゃないか」と父が言い出した。白米を炊き、埋めてあったさつまいもを掘り出し天ぷらにして親子5人で食べた▲これが最も心に残る“ごはん”だと本人のエッセーにある。おいしさや幸せとは無縁でも、生き死にに関わる場面で誰とどこで何を食べたかは忘れ難い。23年前のきょう発生した阪神大震災で同じような経験をした人は少なくない▲「被災後最初に何を食べましたか」。神戸市中央区の「人と防災未来センター」で、語り部ボランティアらに聞き取りした企画展が開かれている。震災資料専門員の岸本(きしもと)くるみさん(30)が「食べ物の話題があの日を振り返るきっかけとなれば」と考えた▲自宅が全壊して生き埋めになった夫婦は約7時間後に救助された。恐怖で震えが残る中、避難所で小さなパンを家族4人で分けて食べ、あきらめなければ誰かが命を助けてくれることを実感した▲家の下敷きになった女性は夫と励まし合って救出された。しかし周辺はがれきの街と化し、水道管が壊れたのか、道端から流れ出る水を飲んでしのいだ。数日後、燃料を買いに出た先の喫茶店で出た水はとてもきれいで、その味は今なお覚えている▲避難所で配られたおにぎりは冷たくても心のこもった糧と感謝した人もいる。遠い日でも食の記憶は、助け合いや命を守ることの大切さを鮮やかに思い起こさせる。

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