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オウム裁判終結

松本教祖ら死刑囚13人 死刑執行焦点に

裁判員裁判・被害者参加 司法も変化

 社会を震撼(しんかん)させたオウム真理教による一連の事件の刑事裁判は、高橋克也被告(59)の上告棄却により開始から22年で終幕を迎えることになった。起訴された教団関係者192人は法廷で応酬を繰り広げ、この間、裁判員制度施行をはじめ刑事司法を巡る環境も大きく変わった。今後、松本智津夫教祖(62)をはじめとする死刑囚13人の執行に焦点が移り、元弁護人らは法務当局の動向を注視している。【伊藤直孝、鈴木一生、巽賢司】

一連の事件の刑事裁判、開始から22年で終幕

 「こんなに長くかかる裁判とは……。オウム真理教の恐ろしさを改めて感じます」。全裁判が終結することへの感想を問われた地下鉄サリン事件被害者遺族の高橋シズヱさん(70)は19日夜、東京・霞が関の司法記者クラブでかみしめるように語った。

 1996年4月24日午前10時過ぎ。シズヱさんは東京地裁104号法廷にいた。「麻原彰晃といいます。オウム真理教の主宰者です」。松本死刑囚は裁判長を見すえた。この日、地裁は他の刑事裁判を開かず、松本死刑囚の公判を集中的に警備。日比谷公園を埋め尽くした傍聴希望者数1万2292人は、21年たった今も地裁で最も多い記録だ。

 公判で松本死刑囚は、井上嘉浩死刑囚(48)ら多くの弟子と見解が対立し、意味不明な発言を連発した。97年4月24日の公判で「地下鉄サリン事件ですが、弟子たちが起こしたとしても、傷害事件であるというのがポイントです。私はストップを命じた。アイ・キャン・スピーク・イングリッシュ・ア・リトル……」などと英語を交えて無罪を主張し、1審途中から自らの殻に閉じこもるようになった。検察側は同12月、審理迅速化のために松本、地下鉄両サリン事件の負傷者3920人について起訴内容の撤回を申し立てたが、公判は7年10カ月に及んだ。

 国会では2004年に裁判員制度の導入が決まった。書面でのやり取りが中心となる審理を改め、口頭での審理の重視や、集中開廷を柱とする刑事司法制度改革が進んだ。議論に関わったベテラン裁判官は「制度導入を巡る議論の背景には、オウム事件をはじめとする有名裁判の長期化が念頭にあった」と話す。

 08年には被害者参加制度が導入され、被害者が法廷の柵の中で意見陳述したり、被告に質問したりすることが可能になった。高橋被告の裁判員裁判に参加したシズヱさんは「早いステップで(制度の改善が)来ていると思う」と振り返る。

 一方、公判は元弟子たちにとっても事件の重さと向き合う時間だった。「私はオウムの世界で生きてきましたが、現世でこのようなことをしてしまい、死刑を免れない」。河原昭文弁護士は、かつて弁護人を務め、今も文通や接見を続ける中川智正死刑囚(55)の言葉が忘れられない。河原弁護士は声を絞り出すように語る。「死刑制度がある以上、その日が来たら受け止めざるをえない。でも、最後の日まで見届けたいと思っている」

 公安調査庁によると、教団は現在、後継3団体が活動する。3団体の構成員は日本国内に約1650人、ロシアに約460人いるという。

大半が再審請求中 松本死刑囚は第4次再審請求中

 オウム事件の全裁判が事実上終結したことで、法務省は今後、既に死刑が確定した教祖の松本智津夫死刑囚ら13人の執行について検討を本格化させるとみられる。

 13人の死刑囚は、坂本堤弁護士一家殺害事件(1989年11月)▽松本サリン事件(94年6月)▽地下鉄サリン事件(95年3月)--のいずれかに関与したとして死刑が確定している。このうち、坂本弁護士一家殺害事件などで殺人罪に問われた元教団幹部の岡崎(宮前に改姓)一明死刑囚(57)の確定が2005年5月で最も早く、地下鉄、松本両サリン事件などで殺人罪などに問われた元幹部の遠藤誠一死刑囚(57)が11年12月で最後の確定となっている。

 同省によると、08~17年に執行された死刑囚で、確定から執行までの平均期間は約5年2カ月。遠藤死刑囚でも確定から約6年が経過している。刑事訴訟法は、死刑執行は判決確定から6カ月以内に命令しなければならないと定めるが、共犯者の判決確定までの期間は算入しないとしている。

 関係者によると、松本死刑囚は東京拘置所の単独室に収容されており、東京地裁に第4次再審請求中。他の死刑囚も大半が再審請求中とみられるという。再審請求中の死刑執行は従来、回避される傾向があったが、前回(昨年12月)、前々回(同7月)の執行は再審請求中の死刑囚だった。法務省幹部はオウム事件を念頭に「条件が整えば粛々と執行になるはずだ」と話す。

 松本死刑囚の近況については、四女が横浜家裁に起こした民事手続きに関連し、東京拘置所が昨年5月時点で家裁に対し「明らかな精神的障害は生じていない。運動や入浴の際に居室から出るよう促すと出てくるが、面会はかたくなに拒否している」との報告を行っている。

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