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堀江敏幸・評 『数と夕方 管啓次郎詩集』

 (左右社・2592円)

 単行本としては異例の判型である。文庫本変型という説明は可能だけれど、最も近いのは、旅に半生を費やした作家ブルース・チャトウィンが愛用していた、モレスキンの手帖(てちょう)だろう。世界を旅して言語空間に斜線を引き、日本語はもちろん、英語、フランス語、スペイン語で言葉を発してきた詩人管(すが)啓次郎にとって、手帖サイズのこの本は、思考と身体の反応を直接的に表現する理想のかたちである。

 ここに綴(つづ)られているのは、内面の日記でも旅の記録でもない。だれも読んだことのない、真新しい叙事詩である。二十一世紀の、とりわけ東日本大震災以後の日常から遊離せず、太古からつづく自然を敬いながらもそれを崇拝しない距離を保って、詩人は私たちを柔らかな輪廻(りんね)転生のなかに投げ入れる。突き放すのではなく、背中を押すのだ。誰の? 自身の背中を。死んだ父と息子の背中を。そして、これからやってくる…

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