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京大iPS研究所で不正 先頭組織での残念な操作

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 ノーベル医学生理学賞受賞者の山中伸弥教授が所長を務める京都大iPS細胞研究所で、助教(36)による論文不正が発覚した。

 iPS細胞研究は、難病治療や新薬開発などにつながるとして、国民の大きな期待が寄せられている。

 同研究所は国内の再生医療研究をリードする拠点組織である。不正はそうした期待を裏切る行為だと言わざるを得ず、とても残念だ。

 不正が認定された論文は、ヒトiPS細胞から、血液中の有害物質や薬物が脳に入るのを防ぐ「血液脳関門」の機能を持つ構造体を作製したという内容だった。昨年2月、米科学誌の電子版に掲載された。

 京大の調査委員会が残されていたデータの再解析をした結果、論文を構成する図や補足図計17カ所で捏造(ねつぞう)と改ざんが判明。論文の主張に有利な方向に操作されていたという。

 京大は他の研究や今後の研究に影響はないとしているが、本当に他に研究不正はなかったのか。更なる調査を進める必要がある。

 同研究所は2010年に開設された。当初から不正防止対策に取り組み、3カ月に1回は全研究者の実験ノートを確認する▽論文の図表の信頼性を裏付けるデータを提出する--などをルール化していた。不正を認定された助教も、ノートやデータはほぼ提出していた。

 それでも不正を見抜けなかったのは、詳しい内容まで確認する体制にはなっていなかったからだ。

 山中所長が対策の形骸化を認め、ルールの運用を厳格化する方針を打ち出したことは当然である。

 ただ、研究が高度化すれば、専門外のスタッフが内容をチェックすることはより難しくなる。今回の論文には10人の共著者がいたが、だれも不正に気づかなかったという。これはおかしい。共著者こそが、内容を精査すべきではなかったか。

 不正をした助教は任期付きの研究者で、今年3月末が雇用期限だった。雇用延長や新たなポストの獲得に向け、研究成果を上げたいという焦りがあったかもしれない。

 若手研究者の雇用の安定化は、山中教授がかねて主張してきた。社会の発展に科学技術は欠かせない。不正対策とは別に、社会全体で検討すべき問題であろう。

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