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草津白根山噴火

気象庁ノーマーク まさに寝耳に水… 

噴火警戒レベル
草津白根山の噴火について、記者会見する気象庁地震火山部の斎藤誠火山課長=東京都千代田区の同庁で2018年1月23日午後1時8分、手塚耕一郎撮影

観測データ「予兆なし」

 23日に噴火した群馬・長野県境の草津白根山の火口は、従来警戒を強めていた「湯釜」ではなく、気象庁が3000年間も噴火していないとみている2キロ南の「鏡池」付近だったと考えられる。火山活動の高まりを示す事前の現象もなく、まさに寝耳に水の災害。噴火警戒レベルは5段階で最も低い1(活火山であることに留意)としていた。それだけに気象庁も驚きを隠せない。死者・行方不明者63人という戦後最大の火山災害となった2014年9月の御嶽山(長野・岐阜県境)の噴火を契機に、「噴火速報」が導入されていたが発表できず、改めて火山監視の難しさを突きつけられた。【飯田和樹、荒木涼子、岡田英、千葉紀和】

 「草津白根山が噴火した」との情報は最初、群馬県草津町から寄せられた。記者会見した気象庁の斎藤誠火山課長は「噴火の前に火山活動の高まりを示すような観測データは見られなかった」と釈明した。

 気象庁は草津白根山と呼ばれる山域のうち、「湯釜」という白根山の山頂火口付近の浅い場所で地震活動が高まるなどした場合、住民らに発表する噴火警戒レベルを1から2(火口周辺規制)に引き上げるという基準を設けていた。だが、レベルを上げる根拠とするような変化はなかった。斎藤課長は「噴火前に警報のレベルを上げて被害を未然に防ぐという努力はしていきたいが、今回の観測データでは困難だった」と説明する。

 噴火の確認も後手に回った。草津町から、本白根山の山頂に煙が上がっているとの通報を受けてデータを確認すると、火山性微動の波形が認められた。そこでレベルを2に引き上げたが、既に噴火から1時間以上も経過した午前11時5分になっていた。さらにレベル3に引き上げたのは、鏡池から1キロ以上離れたロープウエーの山頂駅付近まで噴石が飛んでいるという報告を、現地を観測している東京工業大から受けた後の同11時50分だった。

 噴火に関する判断の端緒が外部からの連絡頼みになったことが気象庁の対応を遅らせ、入山者らへ迅速に知らせる「噴火速報」を発表することもできなかった。噴火速報の対象は、日本全国の活火山111のうち、特に警戒が必要な「常時観測」火山50。草津白根山もその一つで、気象庁などは地震計▽マグマの上昇を山の膨張などから調べる傾斜計▽噴火に伴う爆発の規模を調べる空振計▽監視カメラ--などを設置し、国内有数の観測網を敷いてきたが、重点は白根山側だった。噴火速報は15年8月に導入され、これまで阿蘇山で2回、桜島で1回発表されているのに、今回はタイミングをつかめなかった。

 斎藤課長は「観測された火山性微動が噴火に伴うものか即座に判断できなかった。残念ながら速報が出せなかった」と悔やむ。気象庁の担当者も「データの蓄積がなく、噴火経験の少ない所だから難しかった。遠くから目視で噴煙なども確認できなかったので、噴火したかどうか判断が難しい状態のまま速報は出せない」としている。

 現地で観測している東工大の野上健治教授(地球化学)も「今回のような水蒸気噴火の予知がいかに難しいか痛感した。あそこで起こるとは思わなかった」と話した。気象庁は23日、現地に火山機動観測班を派遣した。噴火の規模や種類、噴石飛散の範囲などを調べている。今後、鏡池がある本白根山を監視するためのカメラを設置するなど、監視態勢を強化する。

水蒸気噴火の可能性大

 草津白根山は「白根山」や「本白根山」など火山活動でできた山々の総称だ。1800年以降、小~中規模の水蒸気噴火が10回以上記録されているのは、いずれも「湯釜」を中心とした白根山山頂火口周辺だ。近年は目立った活動がない本白根山側に対して警戒感が薄まるのは避けられないとしても、地形が示すように、有史以前は草津白根山のあちこちで今回より大きな噴火が起きたことは明らかだ。

 本白根山の山頂周辺にも大小15以上の火口があり、過去に繰り返し噴火したことを証明している。さらに、気象庁は本白根山の前回の噴火は3000年前としているが、石崎泰男・富山大准教授(火山地質学)らはもっと新しい1500~1200年前の痕跡を確認したという。「それ以降も小規模噴火が何回も起きた可能性はある。見落としてきた噴火を調べることが、今回と同じ小規模噴火への備えになる」と語る。斎藤火山課長は23日の記者会見で「本白根山で噴火が起きないとは思っていないが、白根山の方が危険だと思っていた」と明かした。宮下誠・気象庁火山課長補佐は「本白根山の観測態勢は薄かった」と認める。

 火山噴火には3種類あり、今回は水蒸気噴火とみられる。マグマの熱で温められた地下水が水蒸気となり、出口を求めて火口から噴き出すケースだ。比較的小規模になる場合が多いが、噴石を飛ばすこともある。14年の御嶽山もそうだった。石崎准教授は「噴火の特徴をとらえるため、噴石や火山灰の解析が必要だ」と指摘する。

 このほか、地下から上昇したマグマが直接地上に噴き出すのが「マグマ噴火」で、桜島(鹿児島県)や雲仙普賢岳(長崎県)が有名だ。水蒸気噴火とは違い、マグマと地下水が接触し、水が急膨張して火口から爆発的に噴き出すタイプは「マグマ水蒸気噴火」だ。

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