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受験と私

全日本空輸パイロット教官の塙田和夫さん「結果を出せるノートを作ろう」

ANAでパイロットの教官を務める塙田和夫さん=東京都大田区で米田堅持撮影

 全日本空輸(ANA)で教官として、パイロットの育成を担当している塙田和夫さん(47)。大学受験だけでなく、数百人の命を預かる旅客機の機長となるために、社会人となってからも受験勉強を続けている塙田さんは「ノートを作る目的は結果に結びつけること。きれいに作っただけで満足して終わらないように」とアドバイスを送ります。【聞き手・米田堅持】

試験直前に科目変更

 高校入学時の成績は普通でしたが、クラブ活動の野球に打ち込み、空いた時間は趣味のパソコンに熱中していたので成績は急降下してしまいました。精いっぱい打ち込んだ野球では、思ったような結果を残せませんでした。体力には自信があったので、気持ちを切り替えて、部活を引退した3年生の夏を過ぎてから1日10時間以上の猛勉強を始めました。

 数学、物理、化学といった理系科目は得意でしたが、文系の国語と英語は苦手でした。予備校には行かず、受験に適していると言われる参考書を一通り買い、問題集をひたすら解きました。覚えるために、声を出しながら紙に書き出し、半透明シートや赤いチェックペンも活用しました。もちろん、すぐに結果は出ませんでしたが、受験前の1月の校内試験では成績優秀者に名前が載るようになりました。

恩師からの手紙とお守り=米田堅持撮影

 大学受験はセンター試験に変わった最初の年でした。コンピューターや情報処理関連がある学科を選び、受験しました。理科の科目では「物理」を選択するつもりでいましたが、当日、試験開始後に物理の問題を見ると、4問中3問がとても難しく時間がかかりそうだと思いました。そこで、化学の問題を見たところ、こちらの方が時間内に解けそうな気がしました。

 高校の先生には「直前での科目の変更は絶対にするな」と言われていましたが、私は悩んだ末、物理から化学に変更しました。結果から言うと大正解でした。しかし、このやり方は、人にお勧めできるものではありません。

 2次試験は余裕をもって前々日から仙台市内に宿泊して、交通手段などを確認しました。試験当日の会場では、周りの人が自分より賢そうに見えましたが、自分がやってきたことを信じて、目の前の試験問題に集中しました。高校1年の頃に、東北大学の西沢潤一先生の講演を聴いて、守破離の理論、青色発光ダイオード開発の話に興味を持ったこともあり、東北大学で情報工学を専攻しました。

 大学時代は、サークル活動のほか、さまざまなアルバイトを経験して充実した学生生活を送りました。ちょうど就職活動を意識し始めた頃、大学の先輩から「パイロットの試験を受けてみたら?」と言われ、一般の大学からもパイロット試験が受けられることを知り、ANAの入社試験を受けました。

非常事態では、まず笑う

 航空機は機種ごとに免許が必要なので、大学卒業後も何度となく試験を受けることになりました。入社以来、ボーイング767、747(ジャンボ機)、777、エアバスA320型機を操縦し、今は教官として新人パイロット教育に携わっています。

ジャンボ機のコックピットに座る塙田和夫さん=ANA提供

 パイロットはセルフマネジメントが大事です。どんな緊急事態が起きても、落ち着いて対処しなければなりません。先輩からは「非常事態に陥ったときは、まず笑うんだ」と教わりました。口角を上げるだけでも良く、脳が活性化して問題を解決するアイデアが浮かぶことがあるそうです。

 私は現在、インターネット上のクラウドに置いたものをノートとして使っており、必要なもののみ、プリントアウトしています。海外に行く時は、タブレット端末にデータを入れて持ち歩くので軽くて便利です。ですから、ノートは手書きにこだわる必要はないと思います。パイロットとして新たな機種の資格を取得する試験の際には、重要な項目をまとめたリストを持ち歩いて覚えています。

 情報を整理して記憶に焼き付け、見直しが短時間でできるノートを作ると良いと思います。しかし、ノートを作ることが楽しくなって膨大な時間をかけてしまうと、貴重な時間を浪費してしまいます。私も中学生の頃はラインマーカーを7色ぐらい使ってきれいに作っていましたが、作って満足して終わっていました。ノートの作成は目的を意識し、時間を有効に活用することが重要です。

パイロットになってからのノート。手書きではないが、必要な図表と項目をプリントアウトし、分かりやすくレイアウトしている=米田堅持撮影

 ノートは傾向分析、弱点の修正に役立てると良いでしょう。模試を振り返って、その問題を間違った理由を書き出せば、「緊張していた」「計算を書いた文字が汚くて、読み間違いをした」など、自分の欠点が明確になると思います。解決方法を先生や先輩、友人に聞くのも良いと思います。また、調子が良かった理由なども書き出しておけば、試験時に自分をベストな状態にするためのヒントが見つかるかもしれません。当日できることは多くないので、三つぐらいに絞ることをお勧めします。

 受験を理不尽に感じることもあるかもしれません。しかし、人生におけるステップアップをめざすなら、避けては通れない試練です。つらい状況で落ち込んだり、投げ出したくなったりした時は、もう一度、将来の夢や、自分が何のために受験しようと決意したのかを思い出してみてください。自分が将来、成功している姿をイメージしてみましょう。今はつらいけど頑張ろうと思えるはずです。他人のためではなく自分のためにやるということを忘れないでください。皆様の幸運をお祈りします。


 はなわだ・かずお 1970年、栃木県生まれ。東北大学工学部から、全日本空輸にパイロット訓練生として入社。ボーイング767の副操縦士、ボーイング747-400の副操縦士から機長に昇格後、ボーイング777機長、エアバスA320機長を経て、現在は教官として、同社でパイロットの育成を担っている。

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