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第94回センバツ高校野球

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センバツ・おかやま山陽 軌跡/1 敗戦からの再挑戦 「夏」の悔しさ原点 /岡山

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初出場した甲子園で1回戦負けし、グラウンドの土を集めるおかやま山陽の選手たち=2017年8月10日、猪飼健史撮影 拡大
初出場した甲子園で1回戦負けし、グラウンドの土を集めるおかやま山陽の選手たち=2017年8月10日、猪飼健史撮影

 強い日差しがグラウンドをじりじりと照らす、あの夏の悔しさから始まった。

 昨年8月10日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれていた第99回全国高校野球選手権大会。春夏通じて初出場のおかやま山陽は追い込まれていた。1回戦で福島県の強豪・聖光学院とぶつかり、0-6とリードされて九回裏の攻撃を迎えた。2人が次々に打ち取られ、ベンチにいる3年生の目から涙があふれ出した。最後は三盗を狙った走者がタッチアウトになり、ゲームセット。1点も奪えずに聖地での夏が終わった。

 聖光学院の校歌が球場に流れた後、ナインは肩を落としてアルプススタンドへ向かった。ベンチ入りし、試合では出場機会がなかった利光康生(こうせい)選手(2年)もその中にいた。真っ赤に染まった応援団の前で整列した際、3年生の涙にもらい泣きした。3万6000人が詰め掛けたスタンドを見渡し、こう思った。「甲子園は客が入っていてすごかった。必ずこの場所に帰ってくる」

 試合後、ベンチ入りメンバーは大阪市内の宿舎に戻り、夕食を取った。球場からのバスの中はすすり泣く声が聞こえる重苦しい雰囲気だったが、各テーブルは野球部の昔話などで盛り上がり、悲壮感はなかった。その場で堤尚彦監督(46)はマイクを握り、「途中で負けるというのは悔しさしかない。来年はもっと上まで行って、どんな景色があるのかを見せてくれ」と呼び掛けた。当時は控え捕手で、現在は正捕手の川上雅稀(まさき)選手(2年)は「次は自分たちの番だ。自覚を持たなければ」と責任を感じた。

 また、2年生ながら4番を任されていた井元将也(しょうや)選手は、当時主将の川田友選手(3年)から声を掛けられた。「甲子園でリベンジを果たしてくれ。お前が引っ張っていけ」。左翼を守っていた井元選手はこの試合、打球の目測を誤るミスをして先制点を献上し、好機では空振り三振を喫していた。片手で顔を覆い、うなずくことしかできなかった。

おかやま山陽が初出場した2017年夏の甲子園には、たくさんの観客が詰め掛けた=本社ヘリから望月亮一撮影 拡大
おかやま山陽が初出場した2017年夏の甲子園には、たくさんの観客が詰め掛けた=本社ヘリから望月亮一撮影

 1人で敗戦をかみしめた選手もいた。外野の守りで味方選手と交錯し、五回から途中交代した森下浩弥(ひろや)選手(2年)は搬送先の病院で試合の結果を知った。ベッドに腰掛けながらすぐに気持ちを切り替えた。「夏は終わってしまったけど、またあの雰囲気が味わいたい」

 ベンチ入りできなかったメンバーには、別の悔しさがあった。新チームで遊撃手を務める祢元太陽(ねもとたいよう)主将(同)はアルプススタンドから声援を送った。敗戦が決まると、「負けたさみしさもあったが、同級生が試合に出て羨ましい気持ちもあった」と唇をかんだ。スタンドにいた部員たちは試合終了後、バスでそのまま岡山へ戻った。その車中で岡本大佑選手(同)は、隣の席に座った同級生の渡辺空良(そら)選手に声を掛けた。「次は背番号を取ってベンチに入ろう」。渡辺選手は「頑張ろう」と力強く答えた。

 新チームは、敗戦の2日後に始動した。その後、選手たちは2年生だけのミーティングで「先輩たちの成績を超えよう」と誓い合った。目指すは甲子園での初勝利。センバツ出場校選考の重要な参考資料となる秋季中国地区大会に向け、その最初の関門となる県大会地区予選は2週間後に迫っていた。

     ◇

 3月23日に甲子園で開幕する第90回記念選抜高校野球大会へのおかやま山陽の出場が決まった。チームのスローガンは「ストロングスタイル」。厳しい練習や逆境からも逃げない、ぶれないという意味が込められている。出場決定までの軌跡を紹介する。=つづく

(この連載は益川量平が担当します)

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