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暗記偏重の「詰め込み授業」から脱する契機にしてほしい。
高校や大学の教員で作る歴史教育の研究会(会長・油井大三郎東京大名誉教授)が高校の日本史、世界史で覚えるべき用語の大幅削減を提言した。意見を募り、今春をめどに最終案をまとめるという。
現在、高校の教科書では日本史・世界史ともに3400~3800語が収録されている。これを半減させて教科書本文に掲載し、入試で知識を問う用語とするよう求めている。
狙いは暗記偏重からの脱却だ。
研究会の削減案では、世界史でガリレオ・ガリレイやクレオパトラ、日本史では吉田松陰や坂本龍馬、武田信玄、上杉謙信といった著名な人物名も挙げられた。歴史上の役割や意味が大きくないという理由だ。
なじみ深い人名を削減候補に挙げたことには、賛否があるだろう。
半世紀ほど前は、1300~1600語だった。増加の主因は大学入試だ。教科書にない用語が出題され、改訂のたびに取り込まれた。
高校と大学の教員への調査では、4人に3人が「入試の影響で用語暗記中心の授業になっている」と答えている。生徒も覚えるだけで精いっぱいになっているのが現状だ。
入試のために知識を詰め込むのではなく、歴史の流れや時代背景を理解して、考える力を養う「歴史本来の学び」にするのが提言の主眼だ。
増える一方になっている用語を精選するという方向は妥当だ。
新たな学習指導要領では「主体的で対話的な深い学び」が重視される。知識に偏った学びからの転換だ。
大学入試も2020年度から大きく変わる。思考力や表現力を重視し、大学入学共通テストでは記述式問題も導入される予定だ。
これらに対応するには、覚える内容を精選し、授業の中で教員と生徒や生徒同士が議論したり、調べ学習をしたりする時間が必要になる。
用語削減の動きは歴史だけではない。日本学術会議の分科会は昨秋、高校生物で学習する重要用語を、現在の4分の1にするよう提言した。
一度掲載された用語の削減は抵抗感も大きいだろう。だが、知識量のバランスを考え、思考力を高める授業をするにはどうすれば良いか。他教科でも検討を進めるべきだ。
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