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渡辺保・評 『名優の食卓』=大島幸久・著

 (演劇出版社・1620円)直接販売のみ=03・3261・2806

 五年前に亡くなった十二代目団十郎は、鮪(まぐろ)が大好物だった。

 自分専用の包丁で手ずから料理してまず刺身(さしみ)をつくる。残った身を使ってさまざまに自分が工夫した料理をつくった。そのありさまさながら名店の板前はだしだったという。

 団十郎は家の芸である荒事を演じ、また天性の二枚目役者として、鷹揚(おうよう)でゆったりした芸風の役者だったが、その舞台からは想像できない細緻な料理である。この本に登場する三十五人の歌舞伎の名優たちのなかでも異彩を放っている。

 もっとも自分で包丁を持つ役者は他にもいないわけではない。たとえば団十郎の叔父二代目尾上松緑。今の松緑の祖父で「勧進帳」の弁慶が当たり芸。弁慶をつとめている時は毎朝百グラムのステーキを食べてスタミナをつけていたが、自分で肉を調理して大勢の役者や親しい新聞記者に御馳走(ごちそう)するのも大好きだった。この本の著者もその食卓によばれた一人である。

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