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第94回センバツ高校野球

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#初めての春

伊万里センバツへの軌跡 第1部/中 大敗を糧に 貪欲さが生む好循環 /佐賀

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課題を頭に置きながら素振りに励む選手 拡大
課題を頭に置きながら素振りに励む選手

 昨夏の県大会初戦となった2回戦、佐賀工に0-9の七回コールド負けを喫し、早すぎる夏の終わりを迎えていた。試合後、うなだれる選手の中にいる2年生以下に対し、吉原彰宏監督(42)は「秋も初戦負けなら先がないぞ」と突き放した。

 2011年に唐津商を夏の甲子園に導き、14年に伊万里の監督に就いた吉原監督の指導が浸透し始め、伊万里は16年の夏にはベスト4に進んだ。甲子園が届きそうな目標となっていたが、この夏の大敗が選手に現実を突き付けた。レギュラーは遊撃手の犬塚晃海(てるみ)主将(2年)と中堅手の古賀昭人選手(同)の2人だけで、大幅なメンバーの入れ替えとなる中、危機感を募らせながら「再建」が始動した。

 初戦負けしたその日に、早速2年生は全員でミーティングをした。主将は話し合いの結果、1年生の時に学年のリーダーを務めていた犬塚主将が選ばれた。犬塚主将は「もう誰一人としてあんな悔しい思いをしないように、自分がチームを引っ張る」と決意した。

 発足当初の新チームには目立つ選手がいないことに変わりはなく、選手の結束がチームを左右することをナインは感じていた。次第に部員だけのミーティングを開くようになり、「ここで頑張らないとまた負けてしまう。今までやってきた1、2年間がそこで終わることになる」と鼓舞し合った。すると翌日の練習ではすぐに変化が出て、選手の声が出るようになる。先輩と共に味わった大敗が結束を強める糧となっていた。

 新チームのスローガンは「向上、徹底、覚悟」の3文字を掲げた。「試合中は常に攻めの姿勢でいる」や「きつくても下を向かない」といった約束事も決めた。新たに、練習の最後に10本の走り込みを全員ですることを課した。練習試合の後でも、どんなに疲れていても欠かさない。手を抜こうとする部員がいると全員で叱咤(しった)激励する。「秋は勝つ」という意識に向かってチームがまとまり始めた。

 単純なトレーニングをする時は、モチベーションを高めるため数値を具体化したメニューもある。素振りは「30分で400本」とスイング数を明確にした。「あれだけバットを振ってきた」という自信が芽生えるとともに、目標以上に取り組む自主性が育まれる好循環を生んだ。

 創部5年目の1950年以来、半世紀を超えるブランクがあった九州大会への出場を果たした秘訣(ひけつ)を吉原監督は「これまでの代に比べて貪欲さが違う」と評する。犬塚主将は「個々の力は劣っているが、持っている力を本番で出せるチームだからこそ秋の大会で強豪校にも勝てた」と自己分析する。練習も、練習試合も、公式戦もすべて全力でやり切るチームには、いつしか勝負強さが宿るようになっていた。【池田美欧】


 センバツに出場する伊万里を追う「#初めての春」を大会まで随時連載いたします。「#(ハッシュタグ)」を付けており、昨年11月末に開設した毎日新聞佐賀支局のツイッター公式アカウント(@mainichi_saga)と連動して、日々の様子を紹介します。

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