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刑務所

受刑者1300人に認知症傾向か 対応に苦慮

認知症のリハビリで、女性受刑者(手前)に動物の名前を尋ねる介護担当職員=岐阜県笠松町の笠松刑務所で、原田啓之撮影

猫の写真に女性受刑者「犬かな」

 高齢化を背景に、受刑者の認知症対策が課題になっている。法務省は60歳以上の受刑者の14%、全国で約1300人に認知症傾向があると推計しているが、正確な数は分かっていない。今後も認知症患者の増加が見込まれ、新年度からは認知症検査も一部で始まるが、刑務所は現在、どう対応しているのか。現場を訪ねた。

 JR岐阜駅から南へ約4キロ。愛知県境の近くに笠松刑務所(岐阜県笠松町)がある。高さ3メートルほどの塀に囲まれた白壁の建物で、全国に11ある女性刑務所の一つだ。

 今月19日午後。介護担当の非常勤職員が認知症の女性受刑者(68)とテーブルをはさんで座っていた。職員が子供向けの本を開いて猫の写真を指さし、「何か分かりますか」と尋ねると、女性は「犬かな」。職員は「猫ですよ」と優しく声をかけ、他の動物の写真も見せていた。

 所内では今月から、認知症が進まないように読書や塗り絵、軽い運動などのリハビリを取り入れている。女性の場合、入所時は日常会話が成立していたが、次第に症状が進行。刑務作業中に「家に帰る」と建物から出ようとしたり、刑務官に手を上げたりしたこともあり、刑務作業を一部免除してリハビリに当てている。職員は「認知症の専門家ではないので対策は手探り。受刑者がリラックスできるよう気を配っている」と話す。

 笠松刑務所には昨年末時点で446人が入所。平均年齢は49歳で10年前より6歳上がった。65歳以上の高齢者は2割の93人。6人が認知症と診断され、服薬などの医療ケアを受けている。

 別の女性受刑者(80)は「まさか自分が認知症とは思わなかった」と話し、昨年6月の入所後に刑務所の医師から診断されるまで認知症と気付かなかったという。

 刑務所が気を使うのは、他の受刑者からのクレームだ。認知症で夜間に大声を上げたり、他の受刑者をたたいたりすることがあるという。三井健二処遇部長は「トラブルが避けられない場合は独居房に収容するが、会話がないと認知症が進行する恐れもある。できる限り、複数の受刑者が入る雑居房で処遇している」と話す。

 刑務所では食事をみじん切りにしたり、歩行時に手押し車を使わせたりするなど、高齢化対策が広がりつつある。課題は段差解消などのバリアフリー化や人員配置の充実だ。午後5時以降の夜間帯は介護担当職員がおらず、当直の一般職員13人が対応する。竹内久美子調査官は「今後は高齢者専用の施設や、福祉の専門職員の増員が必要になるのでは」と話す。

 法務省は2018年度から札幌、府中(東京都)、名古屋、大阪、福岡など拠点の8刑務所で新たに入所する60歳以上の全受刑者に認知症検査を実施し、刑務作業の軽減や出所時の福祉手続きの支援などを進める方針だ。

 ただ、刑務所で勤務経験のある浜井浩一・龍谷大教授(犯罪学)は「認知症の進んだ高齢者が服役しても症状が悪化するばかりで本人の更生にならない。医療や介護が充実した福祉施設でケアするのが望ましい」と話す。【原田啓之】

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