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#初めての春

伊万里センバツへの軌跡 第1部/下 チームの特長 堅守でつかむ勝機 /佐賀

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昨秋の県予選で一皮むけた山口投手 拡大
昨秋の県予選で一皮むけた山口投手

 「このままでは通用しない」。マウンド上で主戦の山口修司投手(2年)は、佐賀商打線に追い込まれていた。昨秋の九州地区県予選の3回戦。初回に本塁打を浴びて2点を奪われ、続く二回も1点を追加された。持ち球のスライダーやカーブを痛打されていた。

 ここでバッテリーは大きな賭けに出る。二回が終わってベンチに戻った山口投手は梶山勇人捕手(同)に声をかけた。「チェンジアップしかない」

 公式戦ではほとんど投げたことがない未知数の球種だった。リスクを伴うが、相手打線を止める策は他に見当たらない。

 腕を思い切り振って、大胆に投げた。落差のある球が面白いようにコースに決まる。打者のタイミングも外す。「秘策」は功を奏し、三回以降は6安打1失点に食い止めた。5-4で逆転勝ちを収めたチームは波に乗った。

 「あの試合が自分を急成長させてくれた」。山口投手はターニングポイントとなった一戦を振り返る。直球の球速は125キロ前後で打者をねじ伏せるタイプではない。しかし、強豪相手にも気後れすることなく投げれば結果が伴うことを知り、吹っ切れたように上り調子になった。チェンジアップに磨きをかけ、今や「決め球」と呼べるほどになった。

 球を低めに集めて打たせて取る投球に徹する山口投手には、野手の手堅い守りが欠かせない。下級生を始めとしたベンチ入りメンバー以外は基礎ができるまで、ピッチングマシンから出したり、手で転がしたりするゴロをひたすら捕球する練習に費やす。ゴロの捕球がままならない状況だと、ノックに入ることはできない。吉原彰宏監督(42)は「勝つためには、まず相手に点をやらないこと。いくら打てても守備ができないのでは試合で使えない」と守備の力を重視する。

 そんな野手の中心となるのはセンターラインだ。強肩の梶山捕手と、状況判断に優れる遊撃手の犬塚晃海(てるみ)主将(同)は攻守の要となっている。二塁手の松尾拳志選手(同)と中堅手の古賀昭人選手(同)の守りも盤石だ。山口投手は「守備は心強いので、強打者にも安心して投げられる」と信頼を置く。

 一方で、秋の県予選決勝の佐賀学園戦では4失策が響いたせいもあって8点を取られた。準決勝までは1試合平均1失策だったため、強豪に競り勝つ試合展開に持ち込むには、守備の安定が肝心だと選手らは改めて痛感した。

 「守備でテンポをつくり、攻撃の流れをつくるのが伊万里の戦い方。センバツでもこの流れをつくりたい」と犬塚主将は勝機をうかがっている。堅守で粘り、相手の隙(すき)を突いて接戦をものにするパターンに持ち込めるか。きょうもナインはノックに明け暮れ、勝負の分かれ目となる守備を鍛え上げている。【池田美欧】


 センバツに出場する伊万里を追う「#初めての春」を大会まで随時連載いたします。「#(ハッシュタグ)」を付けており、昨年11月末に開設した毎日新聞佐賀支局のツイッター公式アカウント(@mainichi_saga)と連動して、日々の様子を紹介します。

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