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我らが少女A

/178 第5章 24=高村薫 多田和博・挿画監修

 夜半には雨が上がり、むっとした湿気と沈黙が武蔵野を押し包んだ。例年なら風向きによって遠雷のように低く伝わってくる花火の音がなかった分、いつもより早く降りてしまった夜の帳(とばり)が、独り暮らしの女や男の時間を引き延ばし、所在無さをつのらせて、ときに有るか無しかの些細(ささい)な不安や疑念をことさらにふくらませてゆく。そして、そういう物思いにはたいていアルコールが入っているが、多磨町の栂野雪子も、いつの間にか七二○ミリリットルの瓶入りの梅酒が三分の二ほどに減っていて、身体もこころもダイニングテーブルごと地球にのめり込みかけている。

 雪子はもう何度考えたかしれない。警察は根拠のない話では動かない。それなりの根拠があって上田朱美が事…

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