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我らが少女A

/179 第5章 25=高村薫 多田和博・挿画監修

 そのとき栂野雪子がそれほど酔いつぶれていなければ、居間のガラス窓越しに表の道路に立っている浅井忍と、雨上がりの路傍の黄緑色のレンタサイクルが見えたのかもしれない。しかし、雪子のどす黒い酩酊(めいてい)の底にはLINEの着信音も届かず、ましてや家の外の無言の訪問者に気づくことはなかった。

 その浅井忍は、どうしようもない気分が高じた末に、ついにドラクエ11もゲーム機も放り出して大宮のハイツを飛び出してきたが、薬の服用をやめていたときのように雑多な物思いが次々に混線して世界がぐるぐる捩(ねじ)れていたというのではない。むしろ状況は逆で、薬が切れているのに頭はがらんどうの廃校のように静かで、かつてあった雑念は戻ってくる気配もない。久々に服用を再開した薬のおかげで、しばしドーパミンが正常に働くようになった結果の頭の無風状態と、それが新たに生みだしたらしい鬱だということは、昨日あたりまでは分…

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