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<第90回記念選抜高校野球>
昨年9月下旬、全体練習後に照明が落ちた慶応のグラウンド。片隅でネットに向かってバットを振る下山悠介主将(2年)の姿があった。数球を打つごとにコーチと話し合い、また打ち込む。しっくりくるスイングの感触を地道に探していた。
下山主将はもがいていた。けがから復帰してすぐに迎えた昨夏は中距離打者として、3番で大会に出場。高校通算50本塁打を放った絶対的な4番・正木智也選手(3年)が引退した今チームには「主砲」と呼べる存在がいなくなった。4番を引き継いだ下山主将だが、高校の1年半で本塁打は数えるほど。「頭では分かっていても自分が打たないといけないと思ってしまう」
新チームから本格的に打撃コーチを担当した宮良里紀さん(22)は飛距離を伸ばすことを提案した。下山主将のセンスと柔軟性のあるフォームに「もっと大きい当たりを打てるはずだ」と可能性を感じていたからだ。下山主将は「お願いします」と答え、二人三脚での挑戦が始まった。
それからは毎日欠かさず全体練習後にコミュニケーションを取り、その日の感覚を確認。「たくさん学んだ知識から試したいと思わせてくれる方法をわかりやすく教えてくれる」とコーチへの信頼は厚い。ただ言われるままにするのではなく、試して納得できたものを取り入れてきたという下山主将を、宮良さんも「本人の感覚が一番大事」と見守っている。試行錯誤は続いているが、予選を含めた秋季県大会8試合で4本塁打と少しずつ成果が出てきた。
宮良さんを含めて13人のコーチは慶応大学の学生だ。弁護士を目指す杉山瑛彦さん(22)は「インターネットで見られる指導法の動画はほぼ全て見た」というほど勉強熱心で、指導内容を記録したノートは1年で20冊に迫る。熱意あふれるコーチ陣に、関東大会準決勝で好投した渡部淳一投手(2年)も「自分では気づけないことを的確に教えてくれる」と信頼を寄せる。
コーチの存在は心の支えでもある。県大会決勝で東海大相模に0-12と大差で敗れた日の深夜、学生コーチを最も長く務める玉村拓也さん(22)に、下山主将からLINE(ライン)でメッセージが来た。「気持ちが切り替えられないです」。大敗にショックを受ける下山主将を玉村さんは「今のチームがだめなわけではない。劇的に成長できる伸びしろはある」と励ました。
兄のような学生コーチの激励を受け、関東大会で4強入りを果たしセンバツ出場を決めた選手たち。チャンスに強い打者を目指し、下山主将は自分なりの「4番」を学生コーチと共に模索し続ける。【中村紬葵】=つづく
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