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我らが少女A

/182 第5章 28=高村薫 多田和博・挿画監修

 東小金井駅へ向かうレンタサイクルのひと漕(こ)ぎ毎(ごと)に、雑念とも呼べない記憶の切れ端が浮かんだり沈んだりし、何かに似ていると思う間もなく、どこからか二匹一組のぷよぷよがふわふわ落ちてきて、眼底あたりに積み上がってゆく。赤ぷよ。黄ぷよ。緑ぷよ。岩ぷよ。ゴミぷよ。お邪魔ぷよ。ゲームボーイの画面のなかでごちゃごちゃとひしめき合うぷよたちを全消しするのに人生を懸けていたのは十五、六のころだったか。地元ではない町をよそ者がたびたび自転車で通っていた経緯や、それに伴うゴミぷよのようなくだらない出来事の数々よりも、甦(よみがえ)ってくるのはやはりゲームだというのが、自分らしいといえば自分らしい。ああいや、おおかた思考の線路の、ポイントの切り替え装置が故障しているのだろう。停止したが最後、嘔吐(おうと)しそうだと感じながら、忍はペダルを漕ぎ続ける。

 いや、あのころ集中していたのはドラクエ8で、多磨町のあの家の周りをうろついていたときは、ちょうどゼ…

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