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余録

早春の風を受けて走るのは…

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 早春の風を受けて走るのは約3900人。別府大分毎日マラソン大会がきょう行われる。その中に京都大iPS細胞研究所所長の山中伸弥(やまなか・しんや)さんがいるはずだ。昨年2月の京都マラソンで3時間27分45秒を出して、3時間半以内の参加条件を満たした▲山中さんは本紙のコラムで「走り続けるもう一つの理由」を書いている。研究所の教職員は大半が非正規雇用だ。国からの研究費に加えて寄付による支援が欠かせない。別大マラソン以外の大会にチャリティーランナーとして出場してきたのは寄付を募るためでもある▲先日、研究所で任期付きの助教による論文不正が発覚した。安定したポストをつかみたい焦りがあったのかもしれない。山中さんには何とも皮肉で悔やまれる出来事だが、iPS細胞の臨床応用というゴールを目指し走り続けてほしい▲自己ベストが山中さんとほぼ同じ3時間27分の著名な市民ランナーがいる。作家の村上春樹さんだ。自分を長距離ランナーに例えて「少しでも長く生きて、一冊でも多くの小説を書き続けたい」(村上春樹 雑文集)▲村上さんは同書で、小説を書く姿勢に触れている。「我々を囲む厳しい寒さや飢え」や「恐怖や絶望」に対し、語り手自身が希望や喜びを持っていなければ、どうやって説得力を持ちうるのかと。「希望」を読者に伝えるために人生のマラソンを走っているのであろう▲きょうは立春。冬が過ぎ、万物が動き始める。それぞれのランナーが、それぞれの春の兆しを感じるだろう。

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