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火山の専門家、層厚くしよう 文科省が10年計画

火山研究者育成のため、2017年9月に草津白根山で行われたフィールド実習=文部科学省提供

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 草津白根山の本白根山(2171メートル)が1月23日に噴火した時、いち早く気付いたのは気象庁ではなく、ふもとの群馬県草津町に観測拠点をもつ東京工業大の野上健治教授(地球化学)だった。このように、火山防災で大きな役割を果たすのが、大学教授ら火山専門家だ。しかしその数は全国でわずか80人と言われ、層の薄さが指摘されてきた。この課題解消のため、文部科学省は10年計画「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」に取り組み、人材の倍増を目指している。

 ●高齢化も課題

 火山の専門家は大学や国の研究機関に所属。気象庁と協力し合いながら、各火山の過去の噴火の形態や規模、火砕流の広がりを調査したり、現在噴出しているガスや湖水の成分や濃度、火山性地震の回数や振幅の大きさを観測したりし、噴火を警戒している。国民の防災意識の普及の点でも貴重な存在だ。

 戦後最悪と言われる63人の死者・行方不明者を出した2014年9月の御嶽山(3067メートル、長野・岐阜県境)の噴火後、国は全国の活火山111のうち、普段から重点的に防災対策に取り組むべき49火山の周辺を、火山災害警戒地域(延べ155市町村)に指定。「火山防災協議会」の設置を義務づけた。協議会には自治体や気象台など国の行政機関、観光業者団体のほか、火山専門家も入る。噴火シナリオやハザードマップ、避難計画などを作る際、火山専門家は欠かせないが、なり手が少なく、複数の協議会を掛け持ちして負担が増している人もいる。

 火山専門家の“高齢化”も課題だ。文科省の大河原斉揚(なりあき)・地震火山専門官は「50代が多く、10年たてば第一線から引退する人が続出する。人数がさらに減り、火山監視が困難になる」と危機感を表す。若手を育成するにも、地方大学では指導者がごく少数で、多岐にわたる研究テーマを網羅できない実態もある。

 ●5年で倍の160人

 「次世代」プロジェクトも御嶽山の噴火を踏まえ、16年度に始まった。予算は年間約6億円。2本柱を据え、うち1本が特に対策が急務と言われる「人材育成」だ。

 参加28機関のうち、大学やその他の研究施設、火山防災を担当する国や地方自治体、民間企業など計15機関がコンソーシアム(共同事業体)を構築。他大学の授業への出席、活動的な火山での調査技術実習、防災訓練参加などを通じて、火山専門家を目指す修士課程の大学院生に、火山に関する幅広い知識や技術、経験を身に着けてもらう。こうして若いスペシャリストを育て、5年で火山専門家を今の2倍の160人に増やすことを目標としている。

 17年9月には、草津白根山で5日間のフィールド実習も行った。大学院生約20人が参加し、火山観測点の見学や溶岩など地層の観察をしたほか、火山灰分析方法、火山ガスや温泉水の測定技術などを学んだ。これまでイタリア・ストロンボリ火山など海外実習も行っている。受講生からは、「大学の授業だけでは学べないことを得た」「火山防災への関心が生まれた」などの感想が寄せられたという。

 ●噴火確率算出も

 もう一つの柱は火山研究の推進。困難と言われる火山噴火の予測技術向上に取り組んでいる。過去から最近までの噴出物を地層から採取し、いつ、どんな噴火があったかなど歴史を解き明かす。同時に、水蒸気噴火からマグマ水蒸気噴火への移行など、個々の火山の個性もとらえ、噴火予測に役立てようとしている。

 最先端の観測技術向上も進めている。宇宙から地球に降りそそぐ「ミュー粒子」を使い、エックス線撮影のように火山内部を透視してマグマだまりの位置を探ったり、地殻変動の大きさをレーダーでつかむ「リモートセンシング技術」を開発したりし、5段階ある噴火警戒レベルの精度向上などにつなげようとしている。最終的には、大地震で行っているような発生確率の算出を、火山噴火でも行うことを目標としている。

 大河原専門官はプロジェクトについて「文科省として、科学的要素から社会学的な災害対策まで、火山に関係するあらゆる項目を研究する初の取り組み。火山防災対策の底上げを図りたい」と話す。【飯田和樹】

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