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せんべろnet

サイト管理人は30代女性 記者も同行

せんべろ酒場を取材するひろみんさん=東京都港区で2018年1月24日、高山純二撮影

 我らおっさんたちのオアシスとも言える大衆居酒屋。中でも1000円程度でべろべろに酔える店のことを「せんべろ酒場」と言う。そんなせんべろ酒場にスポットを当てたサイト「せんべろnet」が月間70万ページビュー(PV)を集め、酒飲みたちのハートを射止めている。意外なことにサイト管理人は30代の女性。管理人の「ひろみん」さんに匿名、顔出しNGを条件にせんべろ酒場の魅力やサイト設立の経緯を聞いた。【高山純二・45歳/統合デジタル取材センター】

 --せんべろnet設立の経緯を教えてください。

 ◆10年ほど前、東京・新橋のIT企業に勤務し、ウェブディレクターをしていました。新橋は立ち飲みをはじめとした酒場が多い街です。仕事が終わるのも遅く、「ご飯を食べるなら、軽く飲んでつまめる気軽な立ち飲み屋で良いじゃん」と思って通うようになりました。当時は1軒お気に入りのお店があって通っていたのですが、閉店してしまい、グルメサイトで検索したり、足で探したりしていろいろな立ち飲み屋を巡るようになりました。

 グルメサイトに投稿するようになり、約1300件は投稿しました。でも、グルメサイトはフォーマットが決まっており、もっと自由に書きたいと思ったのです。過去にブログを書いていたこともあり、2015年2月にせんべろnetを設立しました。

「お店の雰囲気に浸り、ストーリーを考えるのが好き」

 --大衆居酒屋、特にせんべろ酒場は古く、中にはあまりきれいではないお店もあると思います。客層もおっさんばかりです。抵抗はありませんでしたか?

 ◆全然ありませんでした。それぞれお店の雰囲気があり、その雰囲気にボーッと浸るのが好きなんです。「何年にオープンしたお店なのかな?」「お酒のポスターはいつのものかな?」っていろいろお店のストーリーを考えているとワクワクしてきます。

 また、立ち飲みや角打ち(酒屋で飲むこと)は一人でぶらりと行っても、そこに集まる人とコミュニケーションが取れることもあります。そして、自分の好きなお酒を飲みながら、気の利いたおつまみを楽しむこともできます。せんべろ酒場の良いところは、それらを1000円程度という、日常で使える範囲の金額で楽しめるところではないでしょうか。

 --サイトには約900本の記事が掲載されています。実際に訪問した店舗数は?

 ◆2000店は行っていると思います。このうち記事にしているのは18都道府県の約850店。地域別のまとめ記事なども書いていますので、記事本数は約900本になります。好きな歌手のライブで地方に行った時は、各地方でもせんべろを楽しんでいます。

地元に根付く優良店、掲載しないことも

 --掲載店と不掲載店の基準について教えてください。

 ◆自分が「また行きたい」と思わないお店は掲載していません。単純に予算オーバーだったり、雰囲気などが自分と合わなかったりするお店ですね。例えば女性や一人客が入店不可など、ローカルルールのあるお店も載せていません。あとは好きなお店でも載せていないケースがあります。昔ながらのお店で、インターネット上でも知られていない、地元の常連さんが集まっているようなお店は「出してはいけないのではないか」という思いがあります。

せんべろnetのホームページ

 --設立当初のPV数は?

 ◆1年目で月間20万PVになりました。最高は80万PVですが、17年9月にURLを変えた影響もあり、ちょっと落ちてしまいました。過去にはサイトのシールを作成してお店に置いてもらったり、東京エリアのせんべろマップを作成したりして、そこから口コミにつながって徐々にPVが伸びていったように思います。

せんべろの魅力、多くの女性にも知ってほしい

 --サイトには、おひとり様女性の「入りやすさ」「居心地」も点数化しています。

 ◆インターネットでアンケートしたところ、サイトユーザーの約2割が女性でした。最近では一人飲みする女性が増えており、中にはサイトを閲覧してくれている方もいます。ただし、まだまだ「女性一人だと入りづらい」という声も聞きます。まだ迷っていて一人飲みをしていない女性にもせんべろ酒場の魅力を知ってもらいたいと思い、安心して入れるお店の目安として、「居心地」などを点数化してみました。居心地の判断は、酔客がいるなどタイミングによって変わるので難しいところがあり、私の感覚、主観ではあるのですが、参考になったらうれしいです。

 --今後の目標はありますか?

 ◆月間100万PVを目指しています。今の掲載店舗は、どうしても好きな街や行きやすい街のお店ばかりになってしまい、地域に偏りが出ています。普段あまり行かないエリアや神奈川、埼玉、千葉など東京近郊のエリアにも行ってみたいお店がたくさんあり、それらのお店を紹介して地域の偏りを解消したいと思っています。

せんべろ巡りに記者も同行

 予想以上にハードな一晩になった。

 東京都内を中心に18都道府県の約850店舗を掲載しているサイト「せんべろnet」管理人のひろみんさん。どんな飲み方をしているのか。ある夜、せんべろ巡りにお付き合いさせてもらった。

 待ち合わせ場所は東京・原宿。せんべろ酒場とはほど遠い場所を指定された。午後4時前、JR原宿駅の竹下口で待ち合わせ。若者ファッションの聖地とも言える竹下通りは、着飾ったティーンエージャーや観光客でごった返している。

せんべろ酒場巡りの1軒目に訪れたお店で提供されたつまみ3品。これに最大4杯を飲めるセットが税別1000円となっている=ひろみんさん提供

 ひろみんさんは時間通りに現れた。匿名希望で、顔出しもNG。第一印象は少しふっくらとした可愛らしい女性だ。ひろみんさんは週3~4回、1日当たり3~5店舗を巡っているという。この日の1軒目は竹下通りを抜け、原宿駅から徒歩10分ほどで到着した。

 大衆居酒屋ではなく、原宿らしいこぎれいな和食店で、1000円で最大4杯、お通し3品がつく「せんべろセット」を提供しているという。ひろみんさんは「立ち飲みではサワー類が300円前後のお店が多い。つまみが3品もつき、サワー類が4杯も飲めるのはかなりお得だと思います」。

 いつもは1店舗で2~3杯を飲んで、次の店へ。飲んだ次の日は休肝日。5店舗も回れば、多少は酒に強いというひろみんさんもかなり酔いが回るという。もちろん、失敗もある。九州に地方遠征した際、帰りの列車で寝過ごしてしまい、タクシー代に1万円もかかった。

 ひろみんさんは現在、フリーのウェブディレクターをしており、比較的自由に時間を使える。飲んべえならば、昼過ぎまで寝ているイメージだが、「ちゃんと8~9時に起きて、午前中に仕事をしています」。

 飲みに行く前にはブログ記事を書いており、仕事、ブログ執筆、飲みという生活パターン。両親には健康を心配されているものの、年1回の健康診断で肝機能に問題はなく、総合判定もAだという。

 約1時間半、取材をしながら4杯を飲み、新橋に向かう。ひろみんさんも、私もまだまだ余裕だ。

 2店舗目からは私の先輩も合流。今度は「ザ・せんべろ」とも言える立ち飲み屋だ。ひろみんさんの飲みっぷりを確かめるため、本当はひろみんさんと同じ量を飲む予定だったが、ひろみんさんの注文とは違うホッピーを頼んでしまった。余裕と思いきや、けっこう酔いが回っているのかもしれない。写真を撮ってとりあえずの取材は終了。記憶が定かではないが、それぞれ2杯飲んだと思う。

 次の店は、クラフトビールがお手ごろ価格で飲めるというお店。ここも立ち飲みだ。立ち飲みが続くと、足がつらくなってくる。確か1杯にとどめたはずだ。

4軒目のスナック風立ち飲み。カウンターには魚の缶詰が並ぶ=東京都港区で2018年1月24日、高山純二撮影

 ひろみんさんのせんべろ巡りは、平均すると半分が新規開拓店。自分の足で探したり、インターネットや友人から情報を集めたりして、1人もしくは飲み仲間と2人で飲み歩く。この日の新規開拓は原宿だけで、残りはすでに訪れたことのあるお店だった。

 4軒目はスナック風の立ち飲みで、おっさんの私も一人ならば入店をためらうような店構え。ひろみんさんは常連とみられ、ママさんに名前を呼ばれている。もう何杯飲んだか完全に忘れ、2軒目から合流した先輩もふらついている。

 私も先輩も完全に酔いが回り、脚にきているが、ひろみんさんはしっかりしている。「もう1軒回りたい」というひろみんさんの言葉を聞いて先輩は離脱を宣言。帰宅する背中を見送って、5軒目についていくと、またも立ち飲み屋だった。

 私も酒好きを自認しているが、さすがにつらい。これだけの軒数を回るのは単なる酒好きではない、ある種の情熱が必要だ。ひろみんさんは「好奇心、探求心がわいてお店に行きたくなる」。

 お開きになったのは午後11時ごろだったろうか? 二日酔いはさほどでもなかったが、夜中に両脚がつって目を覚ますハードな酒場巡りとなった。

せんべろ酒場

 1000円でべろべろに酔えるような大衆酒場の俗称。作家の中島らも・小堀純共著の著書「“せんべろ”探偵が行く」(2003年、文芸春秋)で使われたのが最初と言われている。「せんべろnet」では「酒2杯、つまみ1品で1000円以内」をせんべろの定義としている。

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