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第103回全国高校野球選手権

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勝負心・春

2018センバツ中央学院 第2部・支える人たち/3 バス運転手 久家栄治さん /千葉

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ハンドルを握る久家栄治さん。長年の高校野球ファンでもある=我孫子市都部の中央学院高校で 拡大
ハンドルを握る久家栄治さん。長年の高校野球ファンでもある=我孫子市都部の中央学院高校で

 <第90回記念選抜高校野球>

送迎は「安全第一」 元球児、手に汗握り観戦も

 「野球好きとしては最高の仕事です」。そう言ってほほ笑むのは野球部が遠征する際に使うバスのハンドルを握る観光バス運転手、久家(くげ)栄治さん(45)=我孫子市在住=だ。元高校球児で、かつて自身が所属した中学生の硬式野球チーム「我孫子リトルシニア」でコーチも務めている。

 2016年、勤務先のタクシー会社「ニュー東豊(とうほう)」(同市)が野球部の送迎を担当するようになった。相馬幸樹監督(38)が我孫子リトルシニア出身であることを知っていた久家さん。豊島善浩社長(34)にそのことを伝えると「やってみたら」と言われ、昨秋の新チーム発足後から野球部の担当を任された。

 我孫子市出身。千葉商大付属高校時代は通学に約1時間かかり、練習で帰宅が夜11時になることもあった。鮮明に覚えているのは、バットの先に正確にボールを当てることを目的とした片手のみのバント練習。芯にうまく当てられないとひどく手が痛んだ。主に二塁手を務めたがベンチ入りは2年生の秋だけだった。それでも「社会常識や忍耐力が身についた」のが財産だ。

 昨秋の関東大会は雨で延期が相次いだ。大会期間は当初予定の5日間から8日間になったが、その間もずっと野球部のためにバスを走らせ続けた。宿泊先のホテルとバスの駐車場は約3キロ離れていたことから、朝6時に出発する日は午前4時半に起床し、試合前に別のグラウンドである朝練のための送迎も行った。

 全4試合をスタンドから応援し、試合が動く度に、我孫子リトルシニア事務局長の古谷靖さん(57)=我孫子市職員=に電話で連絡を入れた。古谷さんは県立我孫子高校が1978年夏に甲子園初出場を果たした際の野球部員。久家さんと同様、我孫子勢の快進撃に胸を躍らせていた。

 手に汗握って観戦したのが明秀日立(茨城1位)との決勝。1点差に詰め寄られた九回裏、一打サヨナラ負けというピンチの場面で、スタンドの久家さんは古谷さんとの電話をつなぎっぱなしにした。「満塁になった」「もうだめかも」。ラジオの実況中継さながらに詳細に試合展開を伝え、優勝が決まった瞬間は電話越しに喜びを分かち合った。久家さんは「高校野球の面白さを改めて実感できた」と振り返る。

 運転手としてのモットーは「とにかく安全第一」。毎日欠かさず自分で車内清掃を行い、特に入り口の階段は雑巾できれいに磨いている。「勝っても負けても気持ちよく乗ってほしい」との思いからだ。高岡颯選手(2年)は関東大会中、バスを降りる時に「がんばれ」と声をかけられ、「何度も延期になったのにずっとついてくれていて、パワーをもらった」と感謝する。

 野球部の魅力を「どんな時も平常心で行動パターンが変わらないところ」と言う。関東大会で優勝した日も高揚した様子はなく「不思議なくらい普段通り静かに乗っていた」。関東大会でナインが見せた塁に全力疾走する姿にもひかれた。「ヒット1本で還ってくる走塁を見せてほしい」。甲子園でもそんなプレーに期待している。=つづく

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