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理の眼

産経謝罪記事の根の深さ=青木理

 2月8日の産経新聞朝刊に謝罪記事が載りました。問題となったのは昨年12月、沖縄で起きた交通事故の記事。産経の那覇支局長は「事故に巻き込まれた米兵が日本人を救助」という情報を沖縄の地元紙が報じない、という趣旨の記事を産経の紙面とネット版に掲載し、こう決めつけたのです。

     <「反米軍」色に染まる地元メディアは黙殺><米軍がらみの事件・事故が発生するとことさら騒ぎ立て、善行には知らぬ存ぜぬを決め込むのが、沖縄メディアの習性>。さらに沖縄紙を<報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ>とまでののしりました。

     最近になってこれに琉球新報、沖縄タイムスが相次いで反論。沖縄県警も米軍当局も「救助したとは確認していない」という事実が発覚し、産経が記事の削除と謝罪に追い込まれたわけです。

     支局長は県警取材すらしていなかったというのだから削除と謝罪は至極当然。ただ、これは今回のことだけに矮小(わいしょう)化できない、昨今の日本社会とメディアに漂う問題が横たわっていると思います。

     すぐに思い出すのは昨年1月、東京MXテレビが放送した「ニュース女子」。ろくな取材もせず、沖縄で米軍基地反対運動に取り組む市民を中傷して問題化し、放送倫理・番組向上機構(BPO)から「重大な放送倫理違反があった」と指弾されました。

     2015年には、自民党の会合で作家が「沖縄の新聞は潰さなあかん」と言い放ち、出席議員らも「広告収入がなくなるのが一番」などと呼応した件もありました。

     これらの背後にあるのは、政権や政府の意向にあらがう沖縄へのいら立ちでしょう。それを沖縄紙があおっていると思い込み、論外の罵倒を平然と浴びせる。政権や政府に従わぬ者を「反日」などと位置づけ、排除や侮蔑の対象にして構わないという風潮が、沖縄に向けて露骨に噴出しています。

     こうした風潮はあしきナショナリズムの典型であり、社会から多様性を失わせ、少数者の権利と尊厳を毀損(きそん)します。しかも本来は少数者の側に立ち、公権力をチェックすべきメディアがそうした風潮をあおっているのだからタチが悪い。事態の根は相当深刻です。(ジャーナリスト)

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