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我らが少女A

/191 第5章 37=高村薫 多田和博・挿画監修

 亜沙子はテレビでも観(み)ているのだろうか。夕飯が遅くなって、洗いものがまだ残っているのだろうか。五十女の一人暮らしのハイツの明かりは、どのみちほんのわずかな想像しか誘わず、何かまとまったことを考えようとした雪子の思いはすぐに行き詰まる。そこにちょっとした空白が生まれ、荒れていた呼吸がしばし鎮まるにつれて、母の節子が自宅で開いていた水彩画教室の風景が甦(よみがえ)り、その周りにあった物音や話し声がいきいきと響いてくる。そのなかに上田の母娘の声を聴き分けると、知らぬ間に胸を締めつけられて、路傍の雪子はさらに棒になっている。

 あれは二○○三年の夏だったか、東中学の生徒だというノッポの少女が母親に連れられてやって来て、塀の外…

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