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村上春樹の名を出すまでもなく音楽の好きな小説家は多い。三島由紀夫も相当「音楽」好きだった。いや、より正確に言うと「音楽的なもの」が必要であったようだ。それは抽象的な美しさの具体的な例証、あるいは、補強として、「暁の寺」におけるドビュッシー「沈める寺」のように見え隠れする。彼の小説「音楽」でも「聴こえるか否か」が重要で「どんな音楽か」は意味を持たない。三島が「好き」なのは、音楽が隠し持っている象徴性や「表」とは違う対位法的な「裏」の意味合いだったのではないか。そこには文学者からの意地悪でユーモアに満ちた視線が感じられる。
ピアニスト・伊藤志宏は、初のトリオによるメジャーデビュー盤「毒ある寓話(ぐうわ)」(ポニーキャニオン)を発表し、3月から記念ツアーを行う。伊藤は40歳。作編曲も得意ゆえ、ジャズ界から引く手あまたの演奏家である。が、ジャズ定番のトリオ活動は極めて少ない。
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