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阪大

入試ミス 「解説」ミス?でさらに疑念 物理問題

大阪大が公表した「解説」。問題文の冒頭で音さを上から見た図(左)を掲載し、二つの腕が逆方向に振動することを示している
大阪大が示した音さの振動のタイプ

 大阪大の昨年2月の入試で外部の指摘によってミスが見つかり、30人の追加合格が決まってから1カ月が過ぎた。ミスが見つかった物理の問題について大阪大が「解説」を公表したところ、解説に対しても物理を専門にする大学教授や予備校講師らから疑問の声が上がっている。大阪大の解説に対し、「物理学的に無理な説明だ」などと厳しい指摘もある。解説を公表したことで新たな疑問が生じ、かえって疑念が消えない状況に陥っている。【鳥井真平/大阪科学環境部】

物理の「音さ」の問題でミス

 ミスが見つかったのは、大阪大が昨年2月25日に行った一般入試(前期日程)の物理の問題。楽器の調律などで使われる「音さ」をたたいた時に出る特定の周波数の音の伝わり方について、音さから出る音と近くの壁で反射した音が強め合う条件を求める「問4」、実験データから音が伝わる速さを求める「問5」でミスがあった。

 大阪大が最初にミスを発表した1月6日の記者会見では、「本来は問4で三つの正答があるところを、正解を一つに限定していた。問5はこれを前提に作問され、別の二つの解答では正解を求められなくなっていた」と説明。同12日に詳細な解説を公表した。

 その解説で大阪大はこう説明した。

 音さの振動には主に(1)U字形の二つの腕がそれぞれ逆方向に振動するタイプ(2)二つの腕が同じ方向に振動するタイプ--の二つがある。「一般的には(1)のタイプが観測されやすい」が、米国の学者が2000年に発表した論文などを引用して「(2)のタイプも実際に観測されている」とした。

 音波が強め合ったり弱め合ったりする条件を求める問題は、振動のタイプが変わると計算結果も変わる。大阪大は、ミスを認識する前は2問とも(2)を前提にした解答を正解としていた。解説では「問4は振動タイプが(2)であることを問題文で特定していなかった」と説明、「問5の内容から問4を(2)で考える受験生もいたと思われる」と主張し、当初の解答と共に(1)を前提とした解答も正答に加えた。問5は「正解を求められなくなっている」として全員に得点を与えることにした。

説明なしに条件を変更

 大阪大の解説公表後から、ツイッター上に疑問点、矛盾点の指摘が次々投稿された。

 <出題者は(2)で音さ(を)たたいたことあるのか?>

 <なぜ苦しい言い訳するんだろう?>

 <大学受験問題としてはNG>

 <音さの構造上、(2)は出にくい>

 一般的に物理の問題は、最初に設定された条件に基づいて解く。新たに条件の追加や修正がなければ、最初の条件が覆されることはない。

 大阪大の問題はどうか。

 音さについての問題は問1から問5まである。問題文の冒頭に「音さは、振動数500ヘルツの音を発し続けるとする」とあり、これが大前提となる。解説でも自ら「音さは決まった振動数の音を発することが明示されているため、前提条件としてはどちらかのタイプのみで振動していると考える」と明記している。途中で変更がなければ、設定された条件は問題の最後まで続くことになる。

 そこで前に戻ると、問1の問題文に「2本の腕は互いに逆向きに振動し……」とある。さらに、音さを上から見た図を掲載し、二つの腕が逆方向に揺れることを示す矢印も書かれている。つまり、(1)のタイプで音さが揺れる前提で問題が作られていたと言える。その後、問4、問5で(2)を考慮する条件の変更はなかった。

「自然科学への背信行為」

 大阪大が(2)を前提にした問4の解答を「正答」としたことについての疑問は多い。

 大阪大にミスを指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「条件の修正がない以上、問4も(1)のタイプしか考える余地はない」と指摘する。大学で物理学を研究するある男性教授は「前の問題文で示した設定を、続く設問で説明なく覆すのは、非常識を通り越して異常だ」と批判した。

 さらに、(2)のタイプの振動は、根拠にした00年の学術論文などによると「(1)よりも振動数は低くなる」とあり、ここでも矛盾が生じる。東京大の押川正毅教授(理論物理学)は「冒頭で500ヘルツとあるので、この音波が全ての問題に適応されると解釈せざるを得ない」とし、大阪大の解説について「この理屈が認められるなら、問題で与えた設定と異なる勝手な条件で考えた解答も全て正解とせざるを得なくなる」と指摘した。

 インターネット上には「解説」の再検討や撤回を求める声もある。「問4についての貴学の解説は自然科学への背信行為。大学・大学院で物理学を学んだ者として看過することはできない」。当初からミスを指摘していた吉田さんは解説が公表された後、再び大阪大に疑問点をぶつけている。

 毎日新聞が大阪大に複数の疑問点を問い合わせたところ、大阪大は「入試問題としての不備は認めた上で、加点の判断をしています。『当初の正答』にも満点を与えることは変わりません」との回答を寄せた。

 2月1日には、京都大の昨年の入試でも音波の問題でミスが見つかった。京大はミスした設問は全員正解とする対応を取り、大阪大のケースのような批判は少ない。

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