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社説

裁量労働制の不適切データ 3年も使い続けた責任は

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 裁量労働制は長時間労働を助長するのではないか。その懸念を政府が否定してきた根拠が崩れた。

 「裁量労働制で働く人の労働時間は、平均的な人で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」

 安倍晋三首相が1月の衆院予算委員会で行ったこの答弁を撤回し、陳謝した。根拠となるデータ自体に重大な疑義が生じたからだ。

 厚生労働省の2013年度労働時間等総合実態調査では、平均的な一般労働者の「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を1時間37分と算出した。裁量労働制で働く人については単に「1日の労働時間」を調査し、結果を比較して「約20分短い」と結論づけたのが問題のデータだ。

 前提条件の異なる調査を単純に比較することに統計的な意味はない。長く働いた日のデータをあえて持ち出し、裁量労働制の方が労働時間が短いと見せかける意図があったのではないか。そう疑わざるを得ない。

 厚労省は「意図的ではなかった」と釈明している。だが、問題のデータは3年間にわたり、裁量労働制の対象業種を拡大する政府方針の正当化根拠に利用されてきた。単純ミスだと謝って済む話ではない。

 首相は「厚労省から上がってきた答弁(資料)にデータがあったから紹介した」と自身の責任を否定した。そうであれば、不適切なデータを3年も使い続けた厚労省の責任を問い、正確な実態調査をやり直すよう指示すべきだ。

 あらかじめ定めた時間を働いたとみなして賃金を決めるのが裁量労働制だ。専門的な職種などで働き方が労働者の裁量に委ねられる半面、長時間労働による過労死が相次ぐ。対象外の業務に適用して残業代を払わないケースも摘発されている。

 政府は裁量労働制の対象拡大を盛り込んだ働き方改革関連法案を今国会に提出する方針だ。法案作成の過程で問題のデータが検討材料に使われた可能性がある。裁量労働制の労働時間が短いことを示すデータはほかにないと厚労省は認めている。

 安倍政権は今国会の最重要法案と位置づけ、長時間労働の規制強化などと一括して法案に盛り込もうとしている。裁量労働制の拡大については少なくとも法案から切り離し、別に議論するのが筋だ。

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