特集

第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月10~29日)の特集サイトです。

特集一覧

強者に勝て

’18センバツ下関国際 第2部/1 「どん底」から立て直し /山口

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
選手を指導する坂原監督=上入来尚撮影 拡大
選手を指導する坂原監督=上入来尚撮影

 <第90回記念選抜高校野球>

 「なんでカバーに入らないんだよ」「自分が良ければいいのか」。例年になく寒い日が続いたこの冬、選手たちの声が響きわたる下関市伊倉の下関国際グラウンドで、坂原秀尚監督(41)はいつも通り腕を組み、練習を見つめていた。

 2005年、風紀が乱れどん底にあった野球部の監督に就任。努力を重ねれば「弱者が強者に勝つ」野球の面白さを伝え、チームを一から立て直した。

 気持ちで向かう指導ぶりは、スライダーを武器に社会人野球で活躍した現役時代と変わらない。

 生まれは下関市だが、物心つく前に広島市に引っ越した。広島東洋カープの本拠地で、高校レベルでも広陵、広島商など強豪が連なる「野球王国」で育ち、当然のように甲子園に憧れた。

 中学時代、100人を超える部員間の競争を勝ち抜きレギュラーの座をつかんだ。元社会人選手の顧問に鍛えられた部は「負けたらただではおかない」という緊張感にあふれ、勝負へのこだわりをたたき込まれた。

 広島国際学院から甲子園を目指した高校最後の夏、県大会で敗れた後、これまで足を向けなかった兵庫県西宮市の“聖地”を初めて訪れた。眼前に広がる緑の芝生を見た瞬間、全国の球児がこの場所を目指す理由が分かった気がした。

 「甲子園に出ます」。都市対抗野球の広島県予選を最後にグラブを置き、下関国際の指導者となって宣言すると、返ってきたのは冷笑だった。きつい練習に音を上げ部員が大量退部するゼロからのスタート。「公式戦1勝」から積み重ね、次第に実力を付けたチームは夏の県大会で8強、4強、準優勝と一段ずつ階段を上り、ついに昨夏、あこがれの舞台にたどりついた。

 8月8日の開会式。甲子園で入場行進する教え子たちを見て、普段は冷静な男の目から大粒の涙があふれ出た。だが、チームは5日後の初戦で完敗。歓喜の涙は遠い記憶となった。

 敗因を分析し、選手たちがベンチからのサインに「動かされていた」結果、相手捕手の視線や走者の狙いを感じ取れなかったことに気付いた。監督が問いかけ、答えを導き出すスタイルを見直し、選手同士が本音をぶつける機会を増やした。議論は時に迷走するが、干渉せずに待つと、自分たちで正しい方向へ修正できる選手たちが出てきた。

 「笑われて、負けから進化してきた。優勝旗を取りにいく」。敗北を糧にしてきた闘将が目指す場所は頂点だ。

    ◇

 3月23日開幕の第90回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)で春の甲子園に初挑戦する下関国際を支える人々の横顔を紹介する。

〔山口版〕

次に読みたい

あわせて読みたい