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成年後見の「欠格条項」 社会参加へ矛盾の解消を

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 成年後見は認知症や知的障害のある人の財産や権利を守る制度だ。政府は利用促進に取り組んでいる。

 ところが、この制度を利用すると公務員や警備員の仕事ができなくなり、医師や介護士の資格を失う。

 被後見人の職業や資格を制限する「欠格条項」が、各省庁の所管する法律や政令に規定されているためだ。法律だけで180を超える。権利擁護の制度が、逆に就労や社会参加の機会を奪ってきたわけだ。

 政府は成年後見に関する欠格条項の全廃を決め、今国会に関連法案を提出する。遅きに失したとはいえ、各省庁は制度の矛盾解消に向け、取り組みを徹底すべきだ。

 成年後見は現在約20万人が利用している。程度が重い順に後見、保佐、補助の3類型があり、後見と保佐が全体の9割以上を占める。欠格条項はその2類型を対象にしている。

 その結果、介護士や社会福祉士など多くの資格が取得できず、会社の役員や各種法人の理事にも就けなくなっている。

 地方公務員として公園の管理や清掃をし、高齢者施設で働く障害者は増えている。ところが、後見制度を利用するとこうした仕事も失う。

 実際、親族から金銭搾取の被害を受けた障害者が後見人を付けたところ、仕事を失ったという例が各地であり、訴訟にもなっている。

 財産や権利侵害を防ぐ力が弱いからといって、介護や警備の仕事をする能力がないわけではない。それぞれの状況を考慮することなく、自動的に仕事を奪ってしまう現行制度は理不尽と言わざるを得ない。

 家庭裁判所が後見人を選任する際、障害者や高齢者に欠格条項について説明することはほとんどない。制度のデメリットを知らされないまま、不意打ちのように仕事や資格を失う利用者も少なくない。

 欠格条項には以前から批判が強く、政府は2001年に計63の仕事や資格について法改正をした。だが、見直しが不徹底だったため、新しい法律ができると自動的に欠格条項が組み込まれ、以前より多くの法律に規定されるようになった。

 今回はそうした不備がないよう、徹底して制度を改める必要がある。地方自治体の条例の中にある欠格条項についても廃止すべきだろう。

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