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静岡 地域に根差す津波対策

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 1976年に東海地震説が発表されて以降、静岡県は防潮堤整備などによって地震・津波対策に取り組んできた。2011年の東日本大震災後は、南海トラフ地震への懸念から、既存の防潮堤のかさ上げや延伸を進めている。一方、観光や漁業が主産業の伊豆半島では、景観悪化などを理由に一部で整備しない方針で議論が進む。「地域の特性を踏まえた津波対策」を掲げる県は、こうした状況から13年に策定した10カ年計画を改定し、防潮堤の整備目標を引き下げた。

 「厳しい財政状況を踏まえつつ、地域に合った対策に改める」。今年1月、県の幹部職員を集めた会議で、減災や復興の10カ年の行動計画「アクションプログラム2013」の一部改定を決定した際、県危機管理部の杉保聡正部長はこう説明した。

 ●防潮堤整備短く

 計画は、最悪の場合で10万5000人(うち津波が9万6000人)の死者が出ると試算する、県が東日本大震災後に公表した「第4次地震被害想定」に基づいて作られた。犠牲者数を22年度末までに8割減少させることを目指し、防潮堤整備やハザードマップ作製などの目標を定めた。

 静岡県の海岸線は約506キロ。改定前の計画では、防潮堤整備やかさ上げが必要なのは約122キロで、このうち6割強に当たる約76キロを22年度までに整備する目標になった。

 ところが、県が当初想定したほど、国から交付される地震津波対策予算が拡充されなかった。また、伊豆半島を中心に「防潮堤整備をしたくない」とする一部地域の意向もあり、県は今年、この整備目標を約76キロから10キロへと引き下げた。代わりに避難経路の確保や、避難施設への誘導看板の整備といったソフト対策を加え、当初目標の「犠牲者8割減」を目指すとした。

 静岡県の津波対策は、(1)地域の文化や暮らしに根ざす(2)自然と共生し、環境と調和する(3)地域の意見を取り入れて県と市町が協働して推進する--ことを原則とし、「静岡方式」と名付けている。

 ●景観配慮に一工夫

 例えば、約17・5キロにわたって大規模な防潮堤建設を進める浜松市では、堤防そのものの姿を工夫することで周囲となじむようにした。一般的な海岸堤防は、盛り土表面をコンクリートで覆うことで津波の流れによる盛り土の決壊を防ぐ構造になっている半面、景観悪化を招く。そこで浜松市の堤防では、コンクリートで覆わずに、堤防中心部分は土砂とセメントを混合する特殊な技術で耐久性を保ちつつ、壁面にマツの防災林を植えることで周囲の環境に配慮した。

 ●高所避難の徹底も

 一方で、熱海や伊東などの観光地を抱える伊豆半島では、陸地から海が見渡せる景観が求められるほか、船場の移設が必要になる可能性があり、住民生活に大きな影響を与えるとして、防潮堤の存在自体が議論となっている。

 このため県は15年3月から、伊豆半島の50地区で地域の津波対策を考える「地区協議会」を設置。これまでに200回以上、地元観光協会や自治会代表者らと話し合いを重ねてきた。

 住民の多くが水産業に携わる伊東市新井地区は昨年11月、防潮堤の新たな建設や既存施設のかさ上げを行わない方針を決めた。協議会で「防潮堤によって港が移設されたり、市場へのアクセスが悪くなったりするかもしれない」と懸念する意見が出たからだ。

 同地区は、沿岸部の居住地背後に小高い丘があるため、防潮堤の代わりに、地震があったらすぐに高所へ避難することを徹底して犠牲者を減らすつもりだ。

 区長の増田直一さん(81)は「防潮堤が完成するには何年もかかるが、その間に津波が来るかもしれない。高台への避難路整備や、崖崩れ防止を自治体にしてもらう方が時間もお金も少なく効果がある」とする。その上で「協議会ではいろいろな意見が出たが、地元と県や市とでじっくり話し合えたのが良かった」と語った。【井上知大】

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