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湯川豊・評 『銀河鉄道の父』=門井慶喜・著

 (講談社・1728円)

 宮沢賢治の父、宮沢政次郎(まさじろう)の物語なのだが、詩人という厄介な存在を長男にもった生真面目な父がどう生きたか、その父子関係がなかなか見事な小説になっている。第一五八回直木賞の受賞作である。

 岩手県の花巻の、質屋で古着商。政次郎は父の喜助の後を継いで真面目一点張りで商売に励み、財をなし、土地の名士になった。小学校を通じて全甲の成績(賢治同様の秀才)だったが、「質屋に学問はいらない」という父親の方針にしたがって、進学することなく商売に励んだ。ただし、向上心を生涯もちつづけた。家の宗派である浄土真宗の著名な僧侶や知識人を毎年の夏、近くの大沢温泉に招いて「夏期講習会」をひらき、地元の有志が多数これに参加した。いわば財産の社会還元である。また少年の賢治はこの講習会に出て、暁烏敏(あけがらすはや)の知遇を得ている。

 といっても、これは政次郎の事跡を追う伝記ではない。伝記的事実によりながら、エピソードと場面をたくみにつなぎあわせて物語が運ばれる、あくまでも小説である。テーマは、父と子の関係のあり方。政次郎に即していえば、著者のいう「父でありすぎる」男が、天才である息子につきあううちに、自らをどう変えていったかが語られるのだ。

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